こういうのでいいんだよ、なタクティカルSRPG
フェルシールはひと目見てタクティクスオウガやFFタクティクスあたりを連想させる、高さの概念を持つ立体的なタクティカルSRPGです。ざっくりタクティカルSRPGと言えばこのような3Dベースと、ファイアーエムブレムやスーパーロボット大戦のような2Dベースのシステムに大別されると思います。
筆者の好みで申し訳ないのですが、私は前述のタクティクスオウガが大好きで、この系統のゲームは常にチェックしています。Switchでは他にもディスガイアやマーセナリーズサーガなど、多種多様なゲームが出ていますね。
レビュー中はどうしてもタクティクスオウガと比べてどうか、と言う視点が出てきてしまうと思いますが、ご了承ください。ちなみに本作の作者はFFタクティクスリスペクトであることを明言しています。
なお、それなりの規模のDLCも存在するのですが、DLC導入無しでのレビューとなります。
ゲーム概要
基本システムとしては上述の通りタクティカルSRPGで、極めてオーソドックスな作りとなっています。戦闘に勝利すると経験値やお金の他にAPというポイントがたまり、これでクラスのスキルを解放してクラスのレベルを上げます。
スキルには攻撃手段やパッシブ効果、カウンター等が存在し、戦闘の幅が広がっていきます。
ストーリーとしては、遥か昔に凶悪な魔物と戦い、それを封印した英雄たちが永遠の命を授かって統治を行うようになった世界のお話となります。
この不死の英雄たちは「イモータル」と呼ばれ、彼らに仕えて法の番人として治安維持を行うのがサブタイトルにもなっている「アービター」、主人公のカイリーはアービターで、副官のライナー、アービター見習いのアナディンの三人が初期メンバーとなります。
そしてイモータルの一人が引退する事になり、新しいイモータルを選出する儀式が行われることとなりますが、当然ながらその儀式は一筋縄に行かず、主人公のカイリーは否応なく巻き込まれていく事になります。
良い所
敵が本気で殺しに来る
この手のゲームは全体的にそれほど難易度が高くなく、プレイヤーキャラ側の優秀なスキルで危なげなく突破できるものが多い印象ですが、このゲームは違います。
難易度は5段階から選ぶことが出来、真ん中の「ベテラン」が初期設定の難しさとなっているのですが、その設定でも「難しいので万人向けではない」と但し書きされるほどです。
実際敵AIのルーチンが強く、弱い味方を容赦なく殺しに来ます。弱った味方を後方に下げても、弓や銃など遠隔攻撃を積極的に使って徹底的に狙ってきます。このゲームでは敵もアイテムを使ってくるので、近接攻撃しか出来ない敵に安心していたら、「石」(離れた敵を攻撃できるアイテム、しかも必中)を投げて的確に止めを刺された、なんて事も起こります。
攻撃面だけでなく防御も実に厄介で、距離のある内はサポートスキルで防御力や耐性を上げて、死にそうになったら後ろに下がって回復します。「死にそうになったら下がる」はこちらも同じなのですが、敵パーティーは豊富なスキル構成でほとんどが回復手段を持っており、上手いこと追撃を阻まれてまんまと回復されてしまいます。(特に序盤の内は遠距離攻撃可能なクラスが育っていないため、追撃が難しい。これは後述のイマイチに感じる所でもあります)
このように、敵のAIがかなり強く設定されており、危険な敵は意識的に撃破しないとあっという間に戦線が崩壊して全滅となります。しかし、この難しさこそ皆さんがタクティカルSRPGに求めているものではないでしょうか。
たくさんのクラスとスキルに囲まれる
このゲームには隠しも含めて、実に多種多様なクラスとスキルが存在します。メインとなるクラスの他にこれまで経験した他のクラスをサブクラスとして設定することでアクションを増やしたり、覚えたスキルからパッシブ2つ、カウンター1つを選ぶことができます。
これらを組み合わせる事で弱点を補強したり、強みを強化したりできます。この組み合わせを色々考えるのが楽しいです。クラスによって成長率も異なるので、有用なスキルを覚えつつ物理特化、魔法特化、はたまた守備特化…とキャラを強くする楽しみが有ります。
強力なスキルは各クラスのマスター近くまで育てる必要があるので、それが手に入るまで一つのクラスで我慢するか、そこそこ役立つスキルを取得して少しずつ強くなっていくか、そういった戦略も楽しく、よほど露骨な稼ぎでもしない限り、ゲームクリアまで一人で全クラスをマスターするのは難しく、うまく役割分担してパーティー全体の戦力を底上げする必要が有ります。その辺のバランスも良い感じです。
好感の持てる主人公たち
RPGにはストーリーも重要な要素ですが、主人公のカイリーは正義感溢れる人物で、プレイヤーの分身としてはとても感情移入しやすく好感が持てます。冒険を共にするメンバーたちもそれぞれの過去や価値観などがしっかりと描かれ、道中ぎくしゃくする事もありますが目的のために団結していく過程は王道と言った感じで悪くありません。
少なくともプレイヤーが置いてけぼりになる事は無いので、最後まで飽きずにプレイできるはずです。
賛否両論っぽいところ
出撃枠が少ない
たくさんのクラスがあり、様々な育成ができるにも関わらず、戦闘の大半は出撃枠が6しかありません。そのほとんどで主人公のカイリーが強制出撃なので、実質5枠です。
戦闘でHPが0になると負傷扱いとなって次の戦闘に出すとステータス低下というペナルティが有るので、そういった時に控えキャラの出番はあるのですが、一回休めば良いので適当な戦場でパトロールすれば回復できてしまうので、あまりペナルティになりません。(これは救済措置だと思います)
6枠だとどうしても攻撃と回復を両立できる万能キャラ(=固定キャラ)が必要になってくるので、汎用キャラは固有キャラのサポートで一人か二人入れるかどうか位です。恐らくはプレイ時間やマップの広さとの兼ね合いもあるのだと思いますが、せめて8枠は欲しい所でした。
(なお、DLCを導入する事で一部のマップに限り9人出撃が出来るようです。でもやはり本編で楽しみたかったところですね)
キャラデザはいかにも洋ゲー
これはひと目見れば分かると思いますが、ポートレイトを筆頭に、全体的なデザインが実に洋ゲーです。実際洋ゲーなので仕方ありません。汎用キャラを新しく雇用してキャラの外観を決める際、たくさんのポートレイトがあるにも関わらず使いたいと思えるのは男女それぞれ数枚でしょうか。(個人の感想です)
遊ぶ際のモチベーションには少し影響すると思いますが、見た目で敬遠してこのゲームを遊ばないのはもったいない、という事は伝えておきたいです。
逆に悪役はいかにも悪役らしい顔で倒しがいがありますしね。
イマイチに思うところ
敵のスキル構成が理不尽
難易度が高いとは書きましたが、それを通り越してちょっと理不尽に感じてしまう点がこれです。各戦闘では敵の強さは大体こちらと同じレベルに調整される(恐らく難易度も関係すると思われます)のですが、問題はレベルではありません。
敵のスキル構成が、明らかにその時点までの育成ではたどり着けないほど強力な構成になっているのです。複数のクラスレベルを上げてようやく解放される上位スキルを当たり前のように敵が持っていて、こちらとは比較にならない強さになります。
分かりやすいのが暗殺者というクラスで、これは実に5つのクラスをある程度育てないとなれない上位クラスです。
こっちは暗殺者クラスを解禁すらできていない状態なのに、すでにある程度育った暗殺者クラスが襲ってくるという、難しさの実現にその方法はどうなんだろう、と考えてしまう面があります。
ただ、この辺は難易度設定のせいでもありますので、あまりにストレスに感じてしまうようならレベル上げをするか、難易度を調整して対処は出来ます。難易度は部隊メニューから自由に変更できます。
一部隠し要素は発見が難しい
クラスの説明で隠しクラスがあると書きましたが、このゲームはそれ以外にもいくつか隠し要素があります。隠し要素なので難しくても良いのかも知れませんが、すべての隠し要素を見付けるのは独力では無理なのではないかと思う所があります。
最初に引き合いに出したタクティクスオウガにも、見付けるのはほぼ無理と思われる隠し要素は結構ありましたが…。
攻略サイトを見れば解決する話のですが、ネタバレもあるので最初は見たくない方も多いと思います。一週目は取り逃し要素も止む無しで自力で一周、その後攻略サイトを見て隠し要素を回収しつつ二週目というのが理想でしょうか。
携帯モードでは少し見づらい
このゲームは結構な数の状態異常が存在します。毒、出血、沈黙、ステータス低下などなど。これがアイコンで表現されているのですが、困った事に携帯モードの画面の大きさではこれらのアイコンを視認するのが結構大変です。
また、キャラの外観の変更をする時も、顔の種類はもちろん髭やアクセサリ(眼鏡とか)を選べるのですが、携帯モードだと何が変わっているのか良く分かりません。
TVモードなら問題無いのですが、携帯モードでの利便性とTVモードでの視認性が両立できないのは少し残念に感じます。一通りゲームに慣れてバッドステータスアイコンを大体覚えてしまえば大丈夫かなとは思いますが、それなりの苦労が必要です。
まとめ
歯ごたえのあるタクティカルSRPGという点で、かなり満足の行くゲームだと感じます。最近のタクティカルSRPGは簡単過ぎて作業になってしまう、という不満を持っている方なら十分に満足していただけると思います。筆者もビギナー(下から2番目の難易度)はどうにかなったものの、ベテランでかなり苦戦していますので、それ以上のハード、ベリーハードを始めたらどうなってしまうのかと、恐ろしくもあり楽しみでもあります。
反面、開発側も認めている通り万人向けの難易度とは言えないので、この手のゲームに経験が浅い人は、訳も分からず撃退されて遊ぶ気を無くしてしまうかもしれません。
初心者の方は、同ジャンルの中ではかなり難しい方であると認識したうえで挑戦してもらえればと思います。
主なロード時間(演出による待ち時間含む)
計測対象 | 待ち時間 | 備考 |
---|---|---|
起動から最速ゲームロード | 20秒 | 起動後、タイトル画面でコンティニューを選び、フィールド画面が表示されるまでの時間 最初のメーカーロゴはスキップ不可 起動直後からボタン連打で最新のセーブスロットを読み込んでゲームを開始する事ができる |
ロード時間について本文中では特に触れませんでしたが、上記の起動時以外は特にロードを感じる事はありません。場面転換時の暗転でもしかしたらロードが発生しているかもしれませんが、1秒程度の事なので気になりません。とても優秀です。
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