両手いっぱいに芋の花を

レビュー
出典:My Nintendo Store

丁寧に作られた3DダンジョンRPG

 本作は、いわゆる3DダンジョンRPGです。戦闘システムに少々癖がありますが、全体的に非常にシンプルな作りとなっています。BGMもYoutubeで良く聴くフリー音源が使われている等、削れる部分を適切に削った印象のある作りです。
 こう書くと味気ないかのように見えますが、3DダンジョンRPGにおいてはベースがしっかりしているというのは大きなメリットとなり得ます。以下、レビューしていきます。

ゲーム概要

 まずストーリーについては、公式の解説をそのまま引用します。

プレイヤーは、知識や魔法のアイテムを収集する調査隊のメンバー。
錬金術師が迷宮に遺した作物の種を求め、ひなびた島にやってきた。
それは、長年人類社会を脅かしている、
土壌汚染の影響を受けずに育つ特別な種。
プレイヤーは町跡を拠点に、調査隊のチーフに導かれながら、
何度も何度も迷宮に足を運び、種が保管されている最下層を目指す。

ニンテンドーストアのメーカー紹介文より

 タイトルの「両手いっぱいに芋の花を」は、上記の通り土壌汚染によって作物が実りにくくなってしまった世界の再生への希望が込められています。RPGと言えば平和のために悪を倒す、というストーリーが大半なので、種を手に入れるために探索するという目的は珍しいですね。(結局ダンジョンで敵と戦う事になるのですが)

 紹介文にも書かれていますが、主人公は調査隊のパーティーとなります。最大8人まで、好きなようにキャラメイクできます。なおチーフもパーティーに同行はしますが、戦闘要員ではありません。
 キャラメイクは名前、種族、クラスを選択します。
 種族は人間以外にもファンタジーお馴染みのエルフやドワーフ等を選べるのですが、種族で能力値に違いは無く、見た目を変えるだけです。他にも肌の色や髪型を変えたりできます。
 ゲームバランスに関わってくるのはクラスで、8つのクラスが存在します。雇えるのは最大8人までなので全員別クラスにしても良いですし、重複しても問題ありません。

クラスは全8種類。特徴やスキルも表示されるため、役割に迷う事は無い

 ダンジョンの数はそれほど多くなく、最初のチュートリアル替わりに行くダンジョンの次に挑めるダンジョンがいきなり最終目的のダンジョンとなります。ただし、そのダンジョンの下層に潜るために別のダンジョンに挑戦する事になります。
 その分一つ一つのダンジョンは作り込まれており、高低差や各種仕掛け、抜け道など様々な障害を乗り越えて各フロアの最後に待つボスに挑戦する事になります。

良い所

探索のストレスが少ないシステム

 本ゲームの先頭に関するシステムは、以下のような特色があります。
 ・シンボルエンカウント方式で向きの概念がある
 ・敵の行動予定が明らかにされている
 ・戦闘終了後は(死亡していても)体力全快

 まず、シンボルエンカウント方式のため、こちらから仕掛けない限り戦闘が発生しません。もちろん先に通じる通路や宝箱の前などの要所には敵が配置されていますが、敵に接触しない範囲で自由にマップを見て回れます。
 敵パーティーに対して横や後ろから攻撃を仕掛けると敵が振り返る1ターン分自由に行動でき命中率も上がるので、探索ついでに有利な位置取りの検討も出来ます。(大抵の場合、強敵を倒すとショートカットが開通するのですが、このショートカットを使う事で簡単にバックアタックが出来るようになっています)

 また、戦闘自体も敵の行動予定が事前に分かるようになっており、これは本ゲームの大きな特徴となっています。

戦闘画面。ダンジョンRPGでは珍しく敵の行動が明確に示されているので、しっかり対策を

 この手のゲームは基本的に前衛(タンク役)が敵の攻撃を防ぎ後衛で攻撃するのがセオリーですが、そのために前衛は常に防御する事になります。
 しかし本ゲームでは敵の行動が事前に分かるため攻撃が来ないターンはタンク役も攻撃参加でき、戦闘がワンパターンになりにくいです。なお、行動が分かる分敵の攻撃は強力に設定されており、終盤はガードしないとタンク役でも一撃で沈んだりします。(その分ガード性能が非常に高く、ガードで敵の攻撃を8割近くカットでき、スキルを取得すれば更にガードを強力に出来ます)

ストーリーの薄さをカバーする「チーフ」の存在

 3DダンジョンRPGはプレイ時間の大部分がダンジョンの探索と戦闘であり、良く言えばストイック、悪く言えば味気ないものです。本ゲームもストーリーはドラマチックとは言えませんが、探索メンバーの管理を行う「チーフ」の存在が、地味ながら非常に良い味を出しています。

 チーフは種の探索の為に舞台となる島にやって来たわけですが、探索はパーティーメンバーに一任しています。しかしちゃんと仕事はこなしており、探索時に入口まで同行して戦闘中には敵の情報を伝えてくれます。無味乾燥になりがちな攻略データを、チーフからのサポートと言う形で上手く落とし込めています。
 時には情報ではなく「強敵だけど、皆ならきっと倒せる」と言葉をかけてくれたり、こちらを見掛けると手を振ってくれたりと、マスコットキャラとして地味ながら本ゲームの印象を確実に良いものにしてくれます。

探索に赴くパーティーに手を振って見送るチーフ。何気ない心遣いがゲームに彩りを与えてくれる

賛否両論っぽいところ

アイテムコンプリートは地道な努力が必要

 本ゲームではいわゆるアイテム図鑑やモンスター図鑑が分かりやすく、基本的にはゲーム進行に合わせた入手順、登場順となっているので見落としする心配は少ないです。
 ただし、店売りのアイテムはごく一部で、大半のアイテムは敵を倒した際のトレジャーで入手する事になります。幸いモンスター図鑑では未発見のトレジャーは「?」で表示されるためどの敵のトレジャーを未入手なのか分かりやすいのですが、コンプリートは中々大変です。

 コンプリートが難しい理由は、ゲームがシンプルであるがゆえにトレジャーのドロップ率を上昇させるスキルや盗むなどのスキルが無いため、とにかく討伐回数を重ねて運頼みでトレジャーを狙うしかありません。
 一応、一部のアイテム(毛皮系)のみ、こちらが強い状態(10レベル位上の状態)で倒すとほぼ確実にドロップできる「圧倒的レベル差」というシステムがあったり、ドロップ率を向上させるアイテムは(終盤なってようやく)存在します。しかし、これらの救済措置を活用しても、コンプリートは地道な作業が必要となります。

入手装備の偏りが大きい

 装備品は特に武器の種類が多く、剣、短剣、槍、槌、斧、弓、杖、ナックル。一部武器は更に片手と両手に分かれ、それぞれに対応したスキルも存在します。
 となれば出来るだけ強力な武器とスキルで構成したい所なのですが、武器種が多いせいでなかなか欲しい武器が出てきません。私が特に困ったのが、片手槍と弓。槍は「片手槍+盾」の構成の時だけ使える「防御突き」(防御状態のまま攻撃できる)というタンク役にもってこいのスキルが有るのですが、片手槍が全然出てきません。久しぶりに槍が出ても両手槍だったりと、終盤まで欲しい片手槍が出てきませんでした。弓も同様に、かなり長い間同じ弓を使い続けていました。
 鎧についても特に重装鎧の扱いが悪く、こちらは防御力的には強くても炎で2倍のダメージを受けてしまうなど弱点が設定されている事が多いです。勝てない場合は装備を見直して、防御力自体は低くても良耐性を考えた装備を選択する必要があります。
 これは戦略的になって良いと言う意見も有ると思いますが、欠点の無いバランスのとれた装備と言うのがほとんど存在しないので少し面倒に感じてしまいました。

 ちなみにダンジョン内に鍛冶屋が存在し、攻撃力や防御力を強化できるので、耐性や特殊効果に優れた武器防具を鍛えて強くしていくのが本来の遊び方だと思われます。しかし初回プレイ時にはいつどんな装備が入手できるか分からないので、強化が無駄になってしまうのを恐れてなかなか強化できませんでした。お金の使い道はあまり無いので、恐れずどんどん強化してしまうのを想定したバランスだとは思うのですが。

イマイチに思うところ

戦闘中の視認性に難あり

 ダンジョンだけでなく戦闘中も3D描写がされており、戦闘中は視点の変更が自由にできるのですが、あろうことかステータスまで一緒に動いてしまうため、アングルによっては戦闘時のパラメータが非常に見にくくなります。結局初期状態のアングルが一番見やすいため、視点変更できる理由は特になかったと思います。

戦闘中は自由に視点移動可能だが…必要な機能だったのかは疑問。うっかり触って混乱する事も

 また、敵が誰を狙っているか表示する際のアイコンが小さく、パーティーメンバーに同一種族や同じ肌色など外見が分かりにくいメンバーが居ると誰を狙っているのか見分けがつきにくくなります。こちらは宝箱や敵のドロップで入手できる「被り物」で見た目を変えられるほか、誰が誰を狙っているか線で表示してくれるモード(ターゲット表示オン)も有りますが、変にアニメーションするのでそれほど見やすくないです。もっとはっきり線で結んでしまっても良かったかなと思います。

ガード必須のバランス

 これは本ゲームに限らずダンジョン探索ゲームで多い傾向なのですが、ガードの効果が極めて高く、逆に言うとタンク役がガードで後衛を守らなければ一瞬でパーティーが壊滅してしまう難易度で、タンク役が敵の攻撃を引き付けるのが前提となっています。
 幸い、高いガード効果のお陰でタンク役は両手武器でも十分対応でき、盾必須と言うわけでは無いのですが、基本的にタンク役がしっかりと攻撃をガードし、後衛は攻撃しつつタンク役を適切に回復するという戦術で固定されてしまいます。
 パーティーメンバーは三人しか居ないので、戦術だけでなくパーティーもタンク役、回復役、攻撃役でほぼ固まってしまいます。
 この手のRPGで遊んだ人にはお馴染みかも知れませんが、例えばドラクエ等の国民的RPGの戦闘バランスとは違ったものになってきますので、戦闘にのめり込めない可能性もあります。

まとめ

 ダンジョン探索RPGとして、初心者でも楽しめる良作になっていると思います。同種の、例えば世界樹の迷宮が好きな方でも、行動予測有りの戦闘はまた一味違った緊張感が得られると思います。
 ただ、値段なりと言うか、シンプルなシステムも相まって少し薄味に感じてしまうかもしれません。パーティーを徹底的に強くして強い装備を探し、強力な敵と戦いたい、という熟練者の方には向いていないと言えるでしょう。そういった方は割り切って、箸休めに楽しむ程度の心構えで臨むと良いかと思います。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からタイトル画面まで 約45秒起動後、メニューが表示されるまでの時間
ロードバーが表示されるが、何の数字かは不明。ゲーム進行に従って長くなる可能性あり。(今回の計測は一度クリアした後の状態)

ロード後、即座にメニュー画面へ
探索開始(ダンジョンを選択)
4~5秒探索するダンジョンを選択後、移動が可能になるまで

 起動時に少し長めのロードがあります。プレイ中のロードは上記の通りダンジョン探索開始時のみで、それほど長くありません。起動後はストレスなく遊べます。

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