奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ

レビュー
出典:My Nintendo Store

カードゲームでストーリーを進めるウィッチャー世界のRPG

 本作は、Switchでも発売されているRPG「ウィッチャー3」に登場するカードゲーム、「グウェント」を題材としたRPGです。ウィッチャー自体は元々小説がベースで、本作は時系列的にはウィッチャー3の少し前(数年前)が舞台です。
 実は筆者はまだウィッチャーシリーズを遊んだ事が無く、本作がウィッチャー関連作品の初プレイとなります。本記事では、ウィッチャーの世界観を知らない人にとってどのような印象を受けるストーリーなのかも伝えていきたいと思います。

ゲーム概要

 ウィッチャー世界の中で発生した出来事の中から、第二次北方戦争を扱った作品です。主人公は北方諸国の一つであるリヴィアの王女メーヴとなり、突如北方諸国へ侵攻を開始したの南方の大国、ニルフガード帝国と壮絶な戦いを繰り広げる事になります。

 ゲームとしては戦闘等の各種イベントがカードゲームである「グウェント」のルールで行われるRPGです。RPG要素として、フィールドを探索して金や資材、兵隊などを集め、そのリソースを使って各種アップグレードを行います。アップグレードによってデッキの構成枚数を増やしたり、新しいカードの入手やカードの強化が行われます。
 カードゲームと言っても入手できるカードにランダム性は無く、ストーリーでの入手や上記リソースを使って雇用するカードを選択する事になります。レアカードをガチャで引いてデッキを強くする、という要素はありません。

 上記の事も相まって、本作はかなりRPGに力を入れたゲームです。一般的なカードバトルゲームはストーリーがおまけでカードバトルが主体ですが、本作はストーリー7割ほどはあるでしょう。カードバトルゲームだと思って始めると肩すかしを食らうかもしれません。

 カードバトルは、スタンダードバトル(三回勝負で、先に二勝した方の勝ち)、ショートバトル(特殊ルールで行われる一回勝負)、パズル(固定の手札で勝利条件を満たす)の三種類で、それぞれ要求される駆け引きが異なります。

 バトルの舞台は戦場という扱いで、お互いに前列と後列の概念が有ります。ひとつの列に対して最大10枚までカードを並べることができます。つまり自分で出せるカードの上限は20枚で、それ以上を場に出そうとすると即座に破壊されて墓地行きになってしまいます。

カードはいくつかの種類に分かれています。
 まず「シンボル」と言う特殊なカード。これはデッキに1枚だけ設定でき、最初から戦場に登場して様々な効果を自動で発揮してくれます。また、敵に破壊されることもありません。

 そして「アクセサリ」カード。これは最大で4枚まで設定できる特殊なカードです。これを使う事で山札からカードを引けたり、戦場に出ているカードにダメージを与えたりできます。

 最後にメインとなる「ユニット」カードです。それぞれに戦力値とガード値が設定されており、戦場に出した自軍カードの戦力値の合計が自軍戦力となります。
 戦力値は体力も兼ねているので、敵の攻撃で減らされるなどしてゼロになるとそのカードは破壊されて墓地へ送られます。ガード値は、敵に攻撃された時に戦力値を下げずに受ける事が可能です。
 カードはスキルを持ち、戦場に出した時に一度だけ発動するもの、戦場に居る限り毎ターン自動で発動するもの、決められた回数(ブースト)分だけ任意のタイミングで実行できるものなど多種多様に渡ります。

 カードを出し切るか、途中でパスする事でその回のバトルが終了となり、戦力の高い方が勝ち、と言うルールです。最初は大変ですが、これらカードの特徴をしっかり掴んで戦いに臨むことになります。

良い所

完成度の高いカードゲーム

 本作の最も重要な要素であるカードゲーム部分である「グウェント」の完成度が非常に高く、質の良いカードバトルが楽しめます。

 戦いに勝つコツは戦力値の高いカードを出し、敵のカードの戦力値を減らすのですが、一回のターンで一枚のカードしか使えないので、どのカードをどのタイミングで使うかが非常に重要です。
 また、戦力値の高いカードが常に強いというわけではなく、弱くても破壊された時にスキルを発動する「遺言」という能力を持つカードも有るので、敢えて敵に破壊させる、あるいは自ら破壊する事で狙ったスキルを発動する事も可能です。
 シンボルやアクセサリ、リーダーアビリティとのシナジーも考えて、強力なコンボが狙えるようになると俄然カードバトルが楽しくなってきます。

 また、パズルも良く練られており、最初はまったく解法が見えなくても、何度もトライ&エラーする事で突破口が見えてきて、またどのようなコンボで連鎖していくのかを少しずつ学んでいけるチュートリアル的な要素にもなっています。
 使わなくてもクリアできる不要なカードが混ざっている等ちょっとした引っかけも有り、完成度も難易度も高めでやりがいがあります。

 なお、最初の内は少し慣れないと思うのがスタンダードバトルで、一回戦の時に手札を使い切ってしまうと二回戦が圧倒的に不利になり、かと言って余力を残して勝とうとすると最後に逆転されて後が無くなったりと、一回勝って終わりではなく、後に続く勝負も考えて戦略を練る必要があります。

 私は通常の難易度(勇猛果敢)で遊びましたが、非常に手ごたえのあるカードバトルを楽しめました。力押しが出来ずかなり頭を使うので、クリアした時の達成感は高いです。

ローカライズが素晴らしい

 普通に購入しただけでは言語は日本語でも音声は英語のままです。日本語音声は無料のDLCとなっており、別途ダウンロードが必要です。412MBとそれなりの容量なのですが、ダウンロードをお勧めします。ストーリーの語りが感情豊かで引き込まれますし、戦場で出したカードが色々喋る内容が分かって面白くなります。
 本体価格の割にここまで丁寧なローカライズをしてくれる作品はちょっと無いです。このレベルは正直やり過ぎにも感じますが、他の海外メーカーも、もう少しローカライズに力を入れてくれれば、と思ったりします。

賛否両論っぽいところ

正直な事を言うと、疲れるストーリー

 冒頭でも話しましたが、筆者はウィッチャーシリーズ未経験でした。聞くところによると、ウィッチャー3はストーリーが全体に重苦しく、プレイヤーが取る行動も必ずしも良い結果を生むわけではない、いわゆる正解の無い選択が多いようです。私が遊んだ中ではSkyrimもそういう傾向がありましたし、ストーリーに力の入っている洋ゲーではよくある事かも知れません。

 本作も多分にその要素があるのですが、ウィッチャーの世界では人間以外にもエルフやドワーフなどのファンタジーお馴染みの種族が居るのですが、本来は彼ら人間以外だけの世界でした。そこに後から人間という種族がやってきた、という世界観のようです。
 そのため、先住種族と人間達が激しく争う事となり、特にエルフは大規模な殺戮に遭い、奴隷のように酷使されることになってしまいました。今でもエルフの一部はその憎しみを晴らすため、徒党を組んで人間を襲っています。経緯を考えれば無理も無い話なのですが…

 そんな世界なので、エルフ族と関わるストーリーの選択肢は、どれも非常に陰惨なものです。お互いに殺して当然、と言う認識で、序盤に仲間になるキャラもエルフを根絶やしにする事を自分の使命とまで考えており、エルフたちに少しでも慈悲を見せるようなら「付いていけない」と離反していきます。
 他にもいわゆる魔物も居る世界なのですが、魔物の中には理性を持ち、意味もなく他者を傷付けない、話せば分かる魔物も存在します。しかし「魔物=悪」と信じているキャラは、そんな事情など関係なく、魔物を助けるような行動をすると離反していきます。
 しかも離反すると対象のカードがデッキから消えるという、ゲーム的なデメリットもあります。

 もちろん、ゲーム中の選択次第で離反を避ける事は出来ます。ただそれはエルフや魔物を徹底的に弾圧するという選択であり、自分としては選びにくいものでした。彼らを説得する事は不可能で、良い子を演じれば仲間は離れ、殺戮者になれば仲間は留まる、と言った形になります。

 このようなストーリーはいかにも人間臭く、これがウィッチャーのストーリーの面白い所なのだと理解しています。しかし、このように提示される選択肢が露骨で、Aを捨ててBを取るか、Bを捨ててAを取るか…と言う選択の連続はくどく感じてしまって、筆者はあまり楽しめませんでした。
 基本は誰もが納得できる展開で、たまに痛い目を見る位のバランスなら良いのですが、少しでも他人の心情を考えて寛大な処置を取ろうものなら即非難されるような展開ばかりでは、あまり気分の良いものではありません。
 感想は人それぞれかとは思いますが、基本的に取捨選択を要求されるストーリーであることは間違いありません。

パズルが面倒に感じてくる

 時々発生するパズルは、手札が固定なのでデッキの育成が不要で、かつ必ず勝利できるので物資を得るボーナスチャンスです。前述の通り、通常のカードバトルにも応用できるコンボのヒントも得ることができます。
 その一方で、パズルによっては通常のカードバトルの要素が一切関係せず、専用の特殊ルールを強要されることも多くあります。難易度が高めという事もあり、カードゲームがやりたいのに全然違う事をやらされている、と面倒に感じてしまう方も出てくると思います。
 いざとなれば解放をネットで探してしまっても良いかもしれません。また、難易度イージー(新米君主)であればスキップ可能です。

イマイチに思うところ

快適性の欠けるシステム

 カードバトル部分は良く出来ていますが、それ以外のシステム周りが少し気になります。
 第一に、足が遅い。リソースを使って兵舎をアップグレードする事で二段階の速度アップが行えるのですが、それでも遅く感じます。そもそも「探索中の歩行速度を上げる」は本編のカードバトルに対して何ら寄与しないアップグレードなので、本当はそんな事に貴重なリソースを使いたくありません。
 これをオプションではなく、わざわざアップグレードの項目にした理由が不明です。

 また、任意でのセーブができません。何かしらの重大な選択の前にセーブデータを残しておきたいのが人情ですが、選択後にオートセーブされてしまうので、別の選択肢を選ぶなら次の周回にしなければなりません。「選択は一度きり」というゲームデザインなのでしょうが、その結果があまりに納得いかないもので有った場合にやり直しができないのは厳しいです。
 前述の通り、筆者にとってもう一度周回したいかと言われたらそこまでの魅力を感じないストーリーだったので、後半は割と適当に進めてしまいました。

まとめ

 カードバトルの雰囲気や完成度は高く、非常に奥の深いゲーム性であった分、ストーリーやシステム周りでやや残念な出来に感じてしまいました。恐らく、筆者のようなプレイヤーの場合はカードバトル部分だけが遊べる「グウェント ウィッチャーカードゲーム」の方が向いていたのでしょう。残念ながら、Switchでは発売されていませんが…

 なお、ストーリーと言うか、常に取捨選択を求められる展開は筆者は好きになれませんでしたが、ウィッチャーシリーズをこれまで遊んでいなくても、ストーリーで置いて行かれるという事はありませんでした。すでにウィッチャーシリーズを遊んでいて、その世界観が性に合う方や、選択に伴う犠牲などが有った方が楽しい、と言う方には受け入れられるのではないでしょうか。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からタイトル画面まで 約40秒起動後、タイトル画面が表示されるまでの時間
最初のロード後、オープニングムービーの演出

スキップ可能だが、長押しが必要なので少し面倒
しかもこのムービーは2つあり、両方ともスキップしないといけない
(一度ボタンを離して、再度長押しが必要)
起動の度に必要なので、少し気になる
ゲームをロード約17秒タイトル後から「コンティニュー」で始めた後に発生するロード
カードバトル開始前ロード約14秒勝負をやり直す際はロード無しなので、全体的にそれほど気にならない

 上記の他、ロードではありませんがマップや兵舎画面を表示する際に画面切り替わりの演出が入ります。それほど長くないですが、個人的には一瞬で切り替わってくれた方が良かったです。

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