潔いほどスパロボ。それでいて驚くほどの完成度
一言で言ってしまえば、「東方プロジェクトのキャラクターが出演するスーパーロボット大戦」です。元々はWindows用のゲームであり存在は知っていたのですが、Switchで発売されるという事で、何よりもまずバンダイナムコが許可した事にびっくりしました。それくらいスパロボしてます。
(そもそも本ゲームが作られたきっかけが、ニコニコ動画に投稿された東方プロジェクトのキャラをスパロボ風に戦わせてみた動画なので、似るのは当然です)
戦闘アニメーションはもちろん精神コマンド、資金を使ったキャラクター強化(強化項目やフル改造ボーナスもそのまま)、各種装備品やスキル育成など、本当にそのままスパロボの感覚でプレイできます。
ゲームの仕様上、比較の為に本家スパロボを引き合いに出す事が多く、スパロボ知識がある方向けのレビューになってしまいますがご了承ください。
ゲーム概要
四角いマスで区切られたマップ上に配置されたキャラクター達を操作して敵を倒していくシミュレーションゲームです。キャラクターは性能や精神、地形適正など様々な特性を持ち、敵キャラを攻撃指定各マップの勝利条件を達成する事が目的です。
ストーリーは東方プロジェクト原作の「東方紅魔郷」の状態から始まり、そこから大体原作の作品順に沿ったお話が展開されていきますが、全体的に再構築が行われています。
前述のようにスパロボのシステムを踏襲していますが、スパロボ自体が30年の歴史を誇る長いシリーズのため、実際は各シリーズの良いとこ取りのような形となっています。
以下、本家スパロボとの代表的な類似点を記述します。
- 戦闘シーンは各キャラクターに合わせたBGMが流れ、アニメーションにて行われる
- 精神コマンドは本家スパロボとほぼ同一。毎ターン10回復し、戦闘前の使用もできる
- キャラクターの強化はレベルアップでの能力アップのほか、資金を使った強化、PP(撃墜ポイント)を使ったスキル追加/能力上昇
- 強化対象はHP、MP(本家のENに相当)、運動性、装甲、武器(武器は一括改造)
すべて10段階まで改造するとフル改造ボーナス。ボーナス内容も本家とほぼ同じ - パワー(本家の気力に相当)は100で開始、敵の撃破などで増えていき、150が最大
パワーが増えるとダメージも増え、一部武器の使用が可能なる点も本家と同じ
性格によって増え方が違ったり、スキルなどで限界突破が可能な点も本家と同じ - キャラクターと武器にそれぞれ地形適応が存在する。(ただし空海水で、宇宙はない)
- 援護攻撃、援護防御、合体攻撃などの概念がある。また、一部ユニットは合体と分離が可能
- 後半になるとツインユニットを組むことができる
代表的なものを挙げてみましたが、書くほどにスパロボって感じがしますね。スパロボをプレイした事のある方なら、違和感なく遊べることと思います。
とは言っても、もちろんすべてがスパロボというわけではなく、本作ならではの工夫が見られます。東方プロジェクトの原作が弾幕シューティングであり、スペルカードという独特なシステムを導入していましたが、それをうまくスパロボのシステムに落とし込んでいます。
それが「弾幕」と「スペルカード」というシステムです。
弾幕は、敵のみが展開する範囲地形効果です。その範囲内では回避率、防御力、移動力が低下します。さらに複数の敵の展開した弾幕の効果は重複するので、敵の密集地帯の弾幕による低下効果はかなりのものになります。さらに一部のボス格はそれ以外にも武器射程-1など、様々な特殊効果を持つ弾幕を展開します。
これに対抗する手段として、移動モードに「高速」と「低速」が存在します。「低速」はその名の通り移動力が落ちますが、上記の弾幕の影響を受けなくなります。ただし、特殊効果については低速モードであっても影響を受けてしまいます。
また、低速モードには移動力低下以外にもデメリットがあり、戦闘中に回避に成功しても命中率分のダメージを受ける「グレイズ」という要素が加わります。
例えば1,000ダメージ受ける攻撃を命中率30%の状態で回避しても、30%分の300ダメージは受ける事になってしまいます。もちろん回避自体に失敗した場合は全ダメージを受けます。
もう一つがスペルカードシステム。これはボス格の敵が所有する特別なカードで、撃墜してもそのカードが存在する限り復活し、特殊な弾幕を展開してきます。また武装が追加されるなど、ボス自身の強化も行われる事があります。
スペルカードの多くはターン制限があり、規定ターン過ぎると逃げ切った事になり、次のスペルカードに移ります(最後のカードなら撃墜した扱いになります)
ただし、逃げ切った場合は対象のスペルカードを攻略した扱いにはならないので撃墜時の経験値や資金、アイテムが得られないので、基本的には規定ターン内に倒しきる事が推奨されます。
一部のスペルカードはターン制限が無く、敵を撃墜するまで終わらなかったり、逆に規定ターン生き残る事を要求されるものもあります。
いずれも東方プロジェクト原作のスペルカードをうまくスパロボのシステムに組み込んだものになっています。
最後に、上記以外の本家スパロボとの違いもまとめてみます。
- キャラクター自身が戦うので、乗り換えという概念は無い。全員が専用機のイメージ
ただし、一部のキャラには「換装」の概念がある - 誰でも飛行できるので足並みが揃いやすい(ただ、空適性が弱いキャラクターは注意)
- 各マップの出撃上限は、キャラクター数ではなくコスト制になっている
多くは2.0~3.5のコストで、強いキャラクター(本家スパロボで言えば主人公格のロボット)は高い傾向にあるので、強力なキャラクターばかり使うと出撃数が少なくなる - 宇宙は無いが、「夜」という概念が存在する。夜適正Sのキャラは、夜のステージでは空陸水の適性値がワンランクアップする。地形「夜」を作り出すスキルもある
- 資金を使っての強化以外に、ステージクリアの度に少しずつ入手できるEx-Pポイントによる強化も行える。こちらは全改造段階を上げる強力なものだが、入手量が限られる
- 特定の敵を倒すと「霊撃」が手に入る。そのステージだけで使える、言ってみれば誰でも使えるマップ兵器として使える
良い所
ただの流用ではない、スパロボの良さを凝集した作品
ベースはスパロボですが、上記に上げた弾幕システムやスペルカードシステムがきちんと機能しています。
特にスペルカードシステムは良く出来ており、本家スパロボではボス戦と言えば何十万ものHPを持つ相手をただひたすら削って…というパターンが良くありますが、本ゲームでは
ボスのHPを0にする→スペルカード発動→規定ターン内にHPを0にする→次のスペルカード発動
のように、段階を経てボスを倒す事になります。
スペルカードの内容が実に様々で、射程が減らされて安全な攻撃ができなくなったり、移動禁止にされて味方の回復や援護攻撃が思うようにできなくなったりと、その都度対策に追われます。そのため、本家スパロボよりもボス戦の緊張感が高いと感じます。
また、霊撃システムも本家スパロボに欲しいくらいのものです。概要に書いたように誰でも使えるマップ兵器なのですが、必中な上に固定ダメージです。なので、雑魚敵をまとめて幸運で倒して資金を稼いだり、レベルが低いキャラクターでボスのとどめに使うなど、稼ぎや育成に使えます。
他にも弾幕を消す効果もあるため、厄介な特殊効果の弾幕を打ち消して体制を整えるなど、攻略でも役に立ちます。これは本当によく考えれていると感心しました。
難易度もハードだとなかなかの歯ごたえで、いわゆるリアル系(本ゲームでは明確に区分されていませんが、やはりリアル系、スーパー系の傾向があります)のキャラクターは、雑魚敵の攻撃が2回も当たると普通に落とされかねないバランスになっています。ボスの強力さは言うまでも無いので、強化を適当に行っているとかなり苦戦を強いられます。
特に最近のスパロボは簡単に感じる事が多いので、この位の難易度は個人的に非常に楽しく感じます。さらに上のルナティックという難易度もありますが、これは初見ではおすすめしません。(ゲーム中の説明文でも、「理不尽な難易度」と明記されています)
東方プロジェクト初見でも入りやすい
ストーリーの始まりとなる東方紅魔郷は、東方プロジェクトの世界観を知るにはちょうど良い作品です。(紅魔郷以前は一般的に「旧作」と言われており、紅魔郷以降の世界観が現在の東方プロジェクト作品のベースとなっています)
本家スパロボにもよくあることですが、自分が見た事のない作品が含まれていても、ゲームをしている内に大体その作品の世界観が分かってくるものです。本ゲームはストーリーが非常に丁寧で、もちろん独自の展開ではあるものの、それぞれのキャラクターの立場や考え方は原作を大切にしており、初めての方が東方プロジェクトの世界観を知るのには最適かも知れません。もちろん、すでに知っている方はより楽しめることと思います。
ライブラリもかなり充実しており、各キャラクターの原作での活躍はもちろん、ちょっとした用語などについても非常に詳しく書かれています。
賛否両論っぽいところ
初見殺しや突然の離脱が多い
本ゲームの特徴とも言えるスペルカードシステムですが、それゆえに予備知識なしで立ち向かうと大変な目に遭う事があります。
例えばボスを取り囲んで楽勝かと思っていたら、次のスペルカードがマップ兵器で取り囲んでいたことが仇となったり、射程外から安全に戦っていたら次のスペルカードで長距離射程の武装が追加されたり。難易度にもよりますが、やはりある程度のリセットプレイは必要になるかも知れません。
また、ゲーム開始時に主人公を霊夢と魔理沙の二人から選び、ストーリーも異なる視点から描かれることになるのですのが、その分ストーリーが分岐するとキャラクターもそれぞれの主人公について行ってしまうため、使い勝手の良かったキャラクターが長期離脱してしまったりと、主人公以外はなかなか思い切った強化が出来ない事もあります。もっともこの辺りは本家スパロボでもあるあるなので、こういった部分もスパロボに似ている、と言ったところでしょうか。
イマイチに思うところ
お気に入りのキャラクターが使えるタイミング
本家スパロボにおいても起こる問題ですが、ストーリーの都合上キャラクターの参戦時期にはかなりの開きがあります。お気に入りのキャラクターが終盤参戦だと、少し残念に感じてしまうかもしれません。(原作東方プロジェクトが好きな方なら、各作品のストーリーから加入するタイミングは大体予想できると思います)
ただ、それを解消する策として「ドリームモード」というモードが実装されています。(発売時には無かったのですが、その後のアップデートで追加されました)
周回プレイ時に序盤から好きなキャラを連れて行けるという、まさに夢のようなモードです。そのため二周目以降は問題無いのですが、かなりのボリュームを誇るゲームなので好きなキャラクターを最初から使いたい、と言う人はまず一周クリアまで頑張る必要があります。
まとめ
スパロボ愛と東方愛、両方が程よくミックスされて、非常に遊びごたえのあるゲームです。ぜひ自分で確かめてもらいたいので詳しくはお話しませんが、戦闘アニメーションはスパロボ経験者なら思わず笑ってしまうような演出もあり、それだけでも一見の価値ありです。
スパロボはアニメで見たロボットを活躍させられるという点と、シミュレーション部分の楽しさの両方が評価を得たからこそ長く続いてきたシリーズだと思います。スパロボのシミュレーション部分が好きな方には、本ゲームは間違いなくお勧めできます。
ただし、もともと四つの作品を一つにまとめて移植したゲームですので、ボリュームはかなりあり、長丁場となります。そして現時点では周回要素のドリームモードが未実装であるという事は事前に確認しておいた方が良いと思います。
主なロード時間(演出による待ち時間含む)
計測対象 | 待ち時間 | 備考 |
---|---|---|
起動からタイトル画面まで | 約40秒 | 起動時、毎回コントローラーの確認画面が表示され、操作が必要 イントロと共にメーカーロゴ表示、ここからはスキップ可能 |
起動直後のロードは少し長め。その後は特に気になるロードはありません。コンティニューで再開した場合も2秒程度の暗転ですぐ始まるので、ロード時間とはカウントしませんでした。
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