怪獣の戦争

レビュー
出典:My Nintendo Store

戦略ゲームに見せかけた初見殺しパズル

 「怪獣の戦争」…何だか投げやりなタイトルですが、原題は「Kaiju Wars」とのこと。怪獣に襲われる街を、市長である貴方が軍隊を指揮して防衛するゲームです。
 筆者はプレイしたことが無いのですが、内容的には1990年にファミコンで発売された「大怪獣デブラス」のアイデアに近いようです。詳しくは概要で説明しますが、強大な力を持つ無敵の怪獣を戦車や戦闘機などで壁を作り本拠地である研究所を防衛するのが目的。

 こういった目的と画面を見る限り戦略ゲームのように思えますが、実体としてはパズルゲームに近いものとなっていますので、それを理解した上での購入をお勧めします。なお、筆者は途中で面倒になって全クリアまで到達していない状態です。(理由は後述)
 なお、Switch内部では「Kaiju Wars」として登録されているようで、セーブデータの操作時や再ダウンロード時は「怪獣の戦争」で探しても見つからないのでご注意ください。

ゲーム概要

 ストーリーですが、まず最初にいかにも怪しげな謎の人物たちの会話から始まります。一方、主人公である貴方はとある大都市の市長に任命され、前途洋々…と言った所に突然の怪獣の襲撃が。
 という展開なのですが、全体的に茶番やメタ発現多めの軽めのノリとなっています。この時点で好みが分かれるかもしれませんね。

 流れとしては大戦略やファミコンウォーズのように、陸軍基地で戦車などの地上ユニットを、空軍基地で戦闘機などの航空ユニットを生産し、これらのユニットを操作、攻撃して怪獣のHPを削ります。

ゲーム画面。これだけ見ると純粋な戦略ゲームに見えるが…


 しかし、本ゲームの特徴として怪獣を倒す事はできません。HPを0にしても一時撤退するだけで、しばらくするとまた戻ってきます。
 ではどうすれば良いのかと言うと、こちらの協力者として登場するワグナー博士が研究所で血清を開発しているので、これが完成するまで守り切ったら勝利となります。(システム的にはターン経過で研究所の数に応じた「科学ポイント」が貯まっていき、これが一定数貯まったら勝利)

 怪獣は基本的には自分の周辺にある施設のうち、もっとも近い施設に向かって歩きます(等距離に複数の施設が存在する場合はランダムでどれか一つが狙われるので動きが読みにくくなります)
 基地が破壊されればユニットの生産が出来なくなりますし、商業施設が破壊されれば収入が落ちてユニットの生産が難しくなります。
 怪獣のHPが下がると移動力も落ちるため、玉砕覚悟でどんどん攻撃して、研究所だけでなく他の施設も可能な限り守りたい所です。

 ターンが進んでいくと様々なイベント(ゲーム内では「プロジェクト」と表記)が発生していきます。これらのプロジェクトの中で「博士の居る研究所が判明する」というものがあり、これによって怪獣が博士の居場所を特定すると、他の施設を無視して一直線でその場所を目指して進み始めます。
 そのまま研究所が破壊されればゲームオーバーですので、博士を研究所から逃がして別の安全な研究所に避難させる必要があります。
 敵だけでなくこちらもプロジェクトを発動でき、複数のプロジェクトプールの中から毎ターン3つが選出され、そこから1つ選ぶことになります。これはデッキ構築に使いイメージです。
 通常兵器だけでなく強力な試作兵器もこのプロジェクトから作成可能です。

 このように様々なアクシデントを回避しつつ博士の研究を効率良く進めるためにあらゆる手段を尽くしていくゲームとなります。

良い所

他にはあまり無いゲーム性

 冒頭でファミコンの作品「大怪獣デブラス」に似ていると書きましたが、近年のゲームの中ではこのように圧倒的な力を持つ敵を味方側の弱小ユニットで工夫を凝らして妨害する、と言うのは珍しいタイプではないかと思います。

 象徴的なものとして味方ユニットには攻撃力以外に「カウンター」という値が存在し、怪獣の進路をふさいで倒されることで通常攻撃よりも大きなダメージを与えたり、移動力を落としたりできます。
 そのためには怪獣の進路が分かっている必要があるため、「一番近い施設を狙う」という怪獣の特性を見極め怪獣のルートを予測し、場合によっては敢えて近くに基地を作って怪獣の目標を逸らしたりと一般的な戦略ゲームでは発生しない駆け引きを楽しむことができます。

 ユニットの強化も少し変わっていて、複数生産できるユニットの各種類内で、一つだけ「エース兵器」というものが存在し、ステージ報酬のコインで攻撃力や移動力を増やせます。特に移動力は重要で、使い方次第で正にエースという活躍をさせることができます。(ただし各ステータス値の強化は+1が限界)

様々なシチュエーションのステージ

 ステージをクリアする度にストーリーが進んでいき、新しい怪獣、新しい兵器が次々と登場してきます。その中には時々特殊な条件下で戦うステージも登場します。

 例えばたった一台の戦車だけで戦わなければならなかったり、兵器が一切生産できず、研究ポイントをいかに早く稼ぐかがかぎとなったり。
 いずれもしっかり練られており、クリアする事で兵器の特性や施設の効率的な活用方法をしっかりと学ぶことができます。

戦車一台だけで戦わなければならない特殊なステージに仲間(デンジャー少佐)も戸惑う。セリフは全編こんな感じ

 また、ストーリー進行によって新たな研究員をコインで雇えるようになりますが、彼らの持つスキルもマップ構成によって非常に有効だったり、あるいはまったく役に立たなかったりします。(例えば森に隣接する研究所は生成する「研究ポイント」にボーナスが付くスキルは、森の存在しないステージでは何の意味も無い)
 研究員の選び方次第でかなり戦略も変わってくるのは面白いシステムだと思いました。

賛否両論っぽいところ

初見での対応は困難な怪獣の性能、逆に知ってしまうと楽勝なバランス

 ただでさえ強い怪獣なのに、それに加えて様々な特殊能力を持ち始めます。隣接していると問答無用で撃破されたり、HPを回復したり、挙句の果てには地中に姿を隠したり。

 例えば地中に姿を隠されると味方ユニットの「レーダー」という兵器を近くに配置しないと行動予測の確認もダメージも与えられません。そのため、この怪獣が出現した時にレーダーを生産していなかったり、存在しても怪獣から離れた地点に居る場合は位置が特定できず、気が付いたら研究所が破壊されていた、という事が普通に起こります。前情報無しに攻略するのはほぼ不可能でしょう。
 一方で一度分かってしまえば、事前に出現場所にレーダーを配置しておけば簡単に攻略できてしまいます。(後半になってくると出現場所がランダムのステージも出てくるのですが、その場合でも完全なランダムではなく、特定の複数の出現場所から選択されるのである程度は対策可能)

 という事で、本ゲームは戦略的な難しさを要求されるのではなく、初回は理不尽な怪獣のスキルや出現位置に翻弄されて敗北し、その結果をもって二回目に対策を施すという、戦略ではなく単なる初見殺しパズルとしての側面が強いです。
 筆者は事前に純粋な戦略ゲームだと思ってしまったため、プレイしてみてコレジャナイ感を味わいましたが、そういうゲーム性なのだと割り切れば楽しめるのではないかと思います。
 前述のような「事前にレーダーを配置すれば良い」も、他の怪獣に対処しながらレーダーを生産し、所定の場所に待機させるにはそれなりの戦略性が必要となります。

運要素の存在

 どのゲームにも多少の運要素は有るものですが、本ゲームでは本来のゲーム性に水を差してしまっているように感じる部分があります。
 まず怪獣の進路はターン開始時に予測経路と確率が表示されます。例えば左右に50%の時、研究所に近い方に行くのと遠い方に行くのでは当然クリアの可能性が大きく変わってきます。
 これを回避するためにもっと近い場所に基地を作成して目的を変えさせるという方法があるのですが、基地の作成はかなり高額、そもそも基地の用地が近くに無い場合も有り、いつでも有効というわけではありません。
 これならば等距離の場合の選択ルールを固定化して、確定した経路だけを表示して運要素を排除してくれた方が戦略的であったと思います。

怪獣の予測進路が確率付きで表示される。しかし確率が低くても通る時は通るのであまり当てにならない

 もう一つがゲームが概要でも触れたプロジェクトの存在です。
 プレイヤーが選択するプロジェクトは選んだターンだけ有効になるもの(そのターンだけ基地を無料で作れるなど)、一度選んだらそのプレイ中ずっと有効なもの(特定の地形に地雷を設置できるなど)が混在し、当然ながら強力な永続強化を早めに引ければ一気に有利になります。
 場合によっては怪獣が登場しない1ターン目に3枚とも怪獣を攻撃する無意味なプロジェクトを引いてしまってリトライした方が良かったりと、所謂リセマラのような状況になってしまう事があります。(一部の研究員には特定の種類のプロジェクトを必ず引く、というスキルがあるので完全に運任せというわけではありません)

 また、敵側のプロジェクト(ダークプロジェクトと呼称される)も、ひどいものは「怪獣が2ターン連続で行動する」という効果で、足の速い怪獣の時にこれを引かれたら足の遅いユニット(残念ながらほとんどの地上ユニットが遅い)はまるで追い付けず怪獣に好き放題されます。
 そういう圧倒的不利の中で勝機を見出すタイプのゲームだとは思うのですが、さすがに2ターン連続行動は理不尽が過ぎるので止めてもらいたかったです。

全編に漂うB級映画のノリ

 筆者はあまり気になりませんでしたが、ストーリーの軽いノリ、当たり前のように行われるメタ発現、微妙なデザインと、全体的に色々外しているなと感じる部分があります。
 怪獣のアニメーションなどの演出も最初は楽しいのですが、正直な所ゲームテンポを遅くしています。

怪獣登場のシーン。ちょっとコミカルな雰囲気。最初は面白いが、毎度の事なのでテンポの悪さが気になってくる

 例えば主人公は最初の街で市長として怪獣の防衛に成功するわけですが、なんと次の市長選では復興費用の増大が理由で落選、追い出されたところを別の街の市長に選ばれてその地で再び怪獣の襲撃に遭うという、ゲームのためとは言え報われない境遇にさらされます。
 受け付けない方もいらっしゃると思うので、その点はご注意ください。

 最後に一点ですが、怪獣が登場する時の演出で最初に「地震を検知」と表示されます。この時の効果音がスマホ等で鳴る緊急地震のあのアラーム音と同じなので、あの音が嫌いな方はご注意ください。

イマイチに思うところ

日本語訳が雑

 タイトルからして嫌な予感はしていましたが、やはり日本語訳は難ありです。ストーリー上の台詞が変なのはゲームに影響しないのでまだ良いのですが、プロジェクトや怪獣のスキルがいまいち理解しにくくて実際に使ってみないと分からなかったり(この点も初見殺しに拍車をかけています)、ユニットの翻訳に表記揺れが有ったり(例えば「小型プロペラ機」というユニットがありますが、これはストーリーの方では「ブッシュプレーン」となっていて、これを活用するようヒントが出ても一致するユニットが存在しないので混乱してしまう)

 どうも海外のインディーズは本ゲームのように「とりあえず機械翻訳に突っ込んで完成」みたいな適当な対応で日本語対応を謳っているものが多いです。一方でアンダーテールのように見事な日本語対応をしている作品も有るわけですから、これらを同列に扱うのはきちんと日本語訳をしている他のメーカーに失礼ではないかと感じます。

操作性に難あり、バグや細かい不満も多数

 本ゲームは左スティックでカーソル移動となっているのですが、その操作性に難があります。
 ユニットや怪獣にカーソルを合わせると詳細がポップアップされるのですが、条件は不明ですがユニットの詳細が表示されない事があります。(何度かカーソルを移動させると表示されたりする)

 また、ユニットを怪獣に攻撃させるときに自分が思ったのと違う経路で攻撃したりなど、思い通りにならない事が多々あります。これはユニットで攻撃する時に直接怪獣を選択する方法と、周辺のマスを選択する方法の二通り存在するのですが、直接怪獣を選択すると最短経路ではなく遠回りで攻撃する経路が選ばれる事があるためのようです。怪獣でなく周辺のマスを選択しましょう。
 そんな動きをするなら、そもそも直接選択出来ないようにして欲しいです。

 他にも多数あるのですが、ここで説明するよりも実際に操作してみると分かると思います。操作性はお世辞にも良いとは言えないのでご注意ください。

 また、各ステージはハードモードで挑戦でき、それをクリアする事で追加報酬のコインが手に入るのですが、その際にクリア実績が記録されません。
 ハードモードは結構難しく、折角クリアしてもどのステージをクリアしたか分からないのでは、やる気が大きく削がれます。

 他にも二体以上の怪獣が登場する際に事前に一体分の位置情報しか得られなかったり、そのステージで選べるプロジェクトは開始後しか確認できなかったり(こういった仕様の為に序盤だけ見てリトライする事が多くなり二度手間)、試作兵器完成時になぜか「怪獣」と表示されたり。ちょっと遊んだけですぐに気付くものが、なぜ放置されてリリースされているのか気になるところです。

まとめ

 他にはあまり無いゲーム性で見所はあるのですが、ストーリーやデザインは我慢するとしても肝心な所で足りていない、ちょっと勿体ないゲームだと感じました。
 初見殺しで理不尽な思いをした後に今度は出待ちで完膚なきまでに叩きのめすのはある意味爽快ではありますが、何だか違うなという感じもします。

 それでもある程度は楽しめるので、少なくとも実績バグは直してくれれば…という感じです。
現状ではあまりオススメできない、と言わざるを得ません。演出のせいでテンポも遅めで、同じステージを二度繰り返すのはなかなか苦痛です。初見殺し+遅めのテンポ+先が気にならないB級ストーリーの三重苦のせいで、筆者は途中で面倒臭くなって全クリアは諦めました。

 という事で評価は芳しくないですが、怪獣とB級テイストとパズルが好きで、ある程度の面倒臭さは許容できる方なら気に入るかも知れません。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動から最初のメニューまで 約30秒起動後のメーカーロゴはAボタンでスキップ可能。
最初に表示されるタイトル画面がロード画面を兼ねており、
ロード終了後自動的にメニュー画面に移行する
ステージ開始 約15秒ステージ開始前のブリーフィング画面から「ゲーム開始」を選択し
操作が可能になるまで
ステージ終了後の暗転から
マップ画面に戻るまで
約7秒ステージ勝利後に報酬表示に遷移するまでの時間

 初見殺しで何度もステージをやり直す事になりがちなため、ステージ開始時のロードが少々長く感じます。(全体的なレスポンスも、時々ワンテンポ遅れるような印象を受けます)
 しかしそれ以外にも、前述の通り各種演出でいちいちズームしたりアニメーションが入ったりするためゲーム自体のテンポは遅めです。オプションである程度オフや高速化できますが、それでも十分遅いです。
 このように、ちゃんとオプションは用意されているしゲームのルールもしっかりしている、しかし実際に遊ぶとイマイチという、個人的には推したいのに気になる点が多過ぎて残念、というゲームになってしまっています。今後アップデートが入ったら状況は変わるかも知れませんので、期待しましょう。

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