東方の迷宮 -幻想郷と天貫の大樹-

レビュー
出典:My Nintendo Store

歯ごたえと理不尽の境界。それがインディーズ?

 本作は東方プロジェクトの二次創作に当たる作品です。
 原作者であるZUN氏が二次創作に対して寛容な事もあり、実に多種多様な東方プロジェクト二次創作ゲーム(以下東方ゲーム)が作られており、Switchにも結構な数の東方ゲームがリリースされています。これもその一作。
 本作のタイトルは「東方の迷宮 -幻想郷と天貫の大樹-」ですが、元々はPC版で発売されていた「東方の迷宮2-幻想郷と天貫の大樹」とDLCである「プラスディスク」を合わせた内容のようです。名前から分かる通り本来はシリーズ2作目の作品のようですが、コンシューマ(とSteam)に向けたリリースでナンバリングを変更したようですので、攻略サイトなどを見る場合はご注意ください。

 なお、本レビュー時点では本編クリア後、 プラスディスク分の追加要素攻略中で止まってしまっている状態となっており、完全クリアには至っておりません。

ゲーム概要

 東方ゲームであるだけでなく、この作品はタイトルからも分かる通りニンテンドーDSおよび3DSの人気シリーズ「世界樹の迷宮」をオマージュしており、二次創作のハイブリット的作品となっています。そのため、東方プロジェクトと世界樹の迷宮の知識が前提となりますのでご注意ください。

 上述の通りイメージとしては「東方キャラによる世界樹の迷宮」となりますが、戦闘要素に全振りしたような尖ったシステムとなっています。
 ある日突然幻想郷に世界樹が出現。これを調査すべく、主人公の博麗霊夢が仲間と共に世界樹に乗り込む、と言うダンジョン探索型RPGとなります。

 世界樹の迷宮と比較すると、いくつか違いもあります。気付いた代表的な違いを比較してみます。

世界樹の迷宮と似たところ

  • 拠点は一つのみ、拠点とダンジョンの往復をひたすら繰り返す
  • 素材を集めて装備を作れる
  • スキルポイントでキャラクターを育成、リセットも可能
  • サブクラスで弱点を補強したり長所をさらに伸ばしたりできる
  • FOEやボスキャラの強さが極端で雑魚戦とは違う構成が必要

世界樹の迷宮と違うところ

  • キャラメイクは存在せず、固定キャラのみ
  • ダンジョンが3D表現でなく、2D表現
  • 一度に連れていけるキャラクターは最大12名で、うち最大4名が前衛として戦闘に参加、戦闘中の入れ替えも可能
  • 戦闘中に使用するアイテムが存在しない
  • アクティブタイムバトル(ATB)システムで、敏捷が高いほどターンが多く回ってくる

良い所

ダンジョン探索に特化した割り切り

 このゲーム、とにかく戦闘に特化して作られていて、それがゲームプレイの快適さに結びついています。
 例えばダンジョンRPGなのにマップ表示が2Dは珍しく感じますが、実際3DダンジョンRPGを遊んでいても、結局は2Dマップに頼る事になります。なら最初から2Dで良いんじゃないか?という割り切り(と、筆者は勝手に思っています)が良い方向に働いています。

煩わしい制約や演出がほとんど無い

 他にもダンジョンを出るのはメニューからいつでも可能で、仮に戦闘中に全滅してもデメリットは一切ありません。さらにボス戦闘中の全滅なら拠点に戻ることなく戦闘の最初から再戦も可能です。
戦闘中も余計なメッセージや演出がほとんどなくスピーディー。
 キャラクターのスキルも、ちょっと育成を間違えたかなと思ったら気兼ねなくリセット。いつでも一からやり直せます(ただ、この件については後述に賛否両論ポイントあり)

快適性はゲームの土台

 これらの事に加えて、基本的にロード時間が短い、というよりも初回起動後は有りません。これは本サイトの評価における重要な要素であり、あらゆることが待たされずに進みます。他のゲームと比べると、ロードの短さがいかにゲーム体験の満足度に良い影響を与えるかが良く分かります。

賛否両論っぽいところ

やはりキャラゲーの敷居は高い

 何しろ東方ゲームです。やはり東方プロジェクトの知識が有った方が良いでしょう。
 筆者は一通りのキャラクターを知っていたので、キャラの得意属性はステータスを確認しなくてもある程度把握できました。ストーリーも「この会話があるって事はその内○○が出てきそうだ」と予想できたりします。しかし事前の知識が一切なかったら正直置いてけぼりになりそうです。
 東方プロジェクトに一切興味が無かった人がこれをきっかけに世界観を理解するには少々説明不足と思われますので、どこかで予習が必要になるでしょう。

覚える事が多すぎる

 次にキャラが多すぎる故の得意不得意の把握など、情報量の多さが挙げられます。
 まず基本として攻撃は直接攻撃と魔力攻撃の二つに大別されます。これに「属性」という概念が組み合わさります。
 その属性と言うのが、炎、冷、風、然、魔、霊、冥、物理と実に8属性。さらにレアではありますが、どこにも属さない無属性もあります。
 然属性なんていうのは一般のRPGでは出てこない属性ですね。また、雷なんかは風属性に含まれます。幸い「炎は冷に弱い」のような相関関係はありません。

 さらに状態異常耐性。状態異常には猛毒、麻痺、鈍重、衝撃、恐怖、沈黙、即死、そして能力低下(いわゆるデバフ)がありますが、それぞれに耐性が設定されていて、この値が100以上ならめったに状態異常にならない、という位置付けです。

ここまでを覚えるのも大変ですが、仲間になる実に50人以上のキャラそれぞれに
・物理攻撃型/魔法攻撃型/物理防御型/魔法防御型/オールマイティ型
・各属性特化(特定の属性の攻撃が得意/特定の属性からの攻撃に高い耐性を持つ)
・状態異常特化(特定の状態異常を相手に付与しやすい/特定の状態異常を受けにくい)

のような特性があります。これは各キャラの個性付けとなっている一方、覚えるのは非常に大変です。
後半のボスは基本的にごく僅かな弱点しか持ちません。
 例えば「霊属性の魔法攻撃を徹底的に鍛えたキャラでしかダメージが通らないボス」などが頻繁に登場しますが、アタッカーとして霊属性の魔法攻撃が強いキャラって誰だっけ?と迷う事請け合い。普段から使っているキャラならともかく、ほとんどベンチだったメンバーが実は攻略の鍵になっていたりと、ボス戦の度に効率よく戦えるメンバーが見つかるまでは死にゲーとなります。
 もちろん、強力なボスを創意工夫で倒すのがRPGの醍醐味なのですが、特に表ボスクリア後は極端すぎて辛くなってきます。(攻略が途中で止まってるのも大体そのせい)

エリクサー症候群泣かせの仕様

 最後に、キャラの育成はリセットが容易にできるものの、お金や特殊アイテムを使って行った強化をリセットする場合(ちゃんと使ったお金や特殊アイテムが帰ってくる)、あまり手に入らない「転生の書物」というアイテムが必要になります。
 お金を使ったステータスアップはともかく、特殊アイテムを使っての強化は元に戻すのにレアアイテムを消費するという事で気軽にリセットできません。エリクサー症候群持ちの方(筆者もその一人)は特殊アイテムを一切使えないまま貯めこむ事になりそうです。

 本当は使えばもっと楽に打開できる戦いもあるのでしょうから、迷いなく好きなキャラにつぎ込める人にとっては戦略の一環として逆に良い所に挙げるかも知れません。
(本来、お気に入りのキャラにお金やアイテムを徹底的につぎ込んで強くするのがこのゲームの遊び方で、開発者もそうコメントしています。筆者のように使用をためらうのは間違った遊び方である事は明記しておきます)

イマイチに思うところ

攻略サイトに頼らざるを得ない?

 賛否両論に書いた情報量の多さに加え、全体的に少し説明不足なところがあります。
 スキルの説明文において、スキルをレベルアップした場合にどのように性能向上するのか、書いているものと書いていないもので統一が出来ていません。例えば「スキルレベル×6%」と明記されているものがある一方で、「スキルレベルと共に威力が上がる」と曖昧だったり、何も書いてないものも多いです。詳細な効果は攻略サイトに頼らざるを得ません。
 また戦闘中の攻撃時、実は画面左上に攻撃名とその属性が表示されているのですが、それと同時に画面ではダメージも表示されていますので、普通はダメージの値の方を見てしまいます。バックログも無いので、どのような属性でダメージを受けたのか分かりにくいです。

 どうしても打開できないボスが居る場合、まず相手がどんな攻撃をしてくるのか数戦捨てる覚悟で敵の攻撃属性を見極める必要が有ります。あるいは攻略サイトに頼るか。
 私は攻略サイトに頼ってしまいましたが、敵の弱みに付け込んで一切行動させずに倒せたり、実はボスなのに即死が効いたりと、おそらく有志の方々が何百回と挑んで辿り着いたであろう針の穴を通すような対処策を見るにつけ、やっぱり見ちゃうとズルした気分になってしまいます。
 でも自力で見付けられたかと言えば、やっぱり無理ですかね。

原作準拠ゆえのキャラ格差

 最後にキャラ格差です。原作設定を考慮した固有スキルが存在するため、どうしても普段使いやすいキャラと使いにくいキャラが出てきてしまいます。
出撃枠の限りもあるので、特定の状況にのみ力を発揮できるキャラは特定のボス以外での通常運用は難しいです。自分のお気に入りキャラが使いにくいかった場合はちょっと残念に感じてしまうかもしれません。
 基本的に相手に行動させたら負けのゲームですので、筆者は速度差を無視して最初に行動可能なスキルを持つ射命丸文、問答無用で敵を即死させる西行寺幽々子、状態異常の成功率を高めてくれるスキルを持つ鈴仙が道中手放せませんでした。さらにドロップ率を高めるスキルを持つナズーリンと森近霖之助も入れておきたいので、これだけで12枠の内5枠を占有する事になります。

 ただ、最終的に全キャラにスキル覚醒という追加強化もあります。(筆者はまだ全キャラ分解放できていません)
 そのため、究極的に強化すればどんなキャラでも大差なくなる可能性は有ります。

まとめ

 色々書きましたが、このゲームで一番気に入っている事は「快適性」です。
割り切ったシステムはプレイする上での試行錯誤を楽しいものにしてくれますし、重ねて書きますがロードが短いのは快適性を大きく底上げしてくれるので、インディーズに限らず大手のソフトメーカーにも見習ってほしいところです。

 総じて難易度は高め、特に初見でのボスの強さは理不尽とも言えます。しかし正しい対策と効率的な強化ができればきちんと打開でき、いわゆる「レベルを上げて物理で殴れば良い」RPGとは一線を画します。
 大手メーカーがこの難易度でRPGを作ったら挫折者多数で批判を受けるかもしれません。しかしこれはインディーズ、好きな人が好きなように作ったRPGです。東方ゲームに抵抗が無く、快適で攻略しがいのあるダンジョンRPGを求めている人には間違いなくお勧めできるでしょう。
 腕に自信のある方は、ぜひ難易度ハード+攻略サイト禁止でプレイしてみてください。筆者はどちらも挫折しました。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からの最速ゲーム開始 12~15秒起動~セーブスロットを選択して拠点画面が出るまでの時間
最初のメーカーロゴはスキップ可能
待ち時間に幅があるのは、セーブスロットのデフォルトが最新のセーブではなく第1スロット固定のため、第1スロット以外を最新のセーブスロットにしている場合は選択が必要になるため
また、セーブスロット選択後の「ロードしますか?」のデフォルトも「いいえ」のため、「はい」を選択する必要がある

ソフト起動からボタン連打で最新のロードが出来ない、という問題こそありますが、そもそもの起動はかなり早いですし、それ以降にロードで待たされる感覚はほとんどありません。

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