王立 穴ポコ学園

レビュー
出典:My Nintendo Store

育成は楽しいが、根気を要求されるRPG

 古代祐三氏が率いる、「まもって騎士(ナイト)」で有名なエインシャントによるRPG作品です。ゲームタイトルが何とも奇妙な感じですが、パーティー制と不思議のダンジョンを融合させたような独自のシステムを採用したRPGとなっています。

ゲーム概要

 「穴ポコ」とは何かというと、貴重な鉱石がたくさん採れる不思議な穴のことで、ここで採掘が行われるようになってからその地域は大発展しやがて王国(穴ポコ王国)が成立しました。
 しかしその穴は実は広大な地下世界に繋がっており、そこに封印されていた謎の存在「モーティフ」と人間達は戦争状態になってしまいます。それから300年後…という設定です。
 すでにこの戦争はおとぎ話となっており、地下世界の住人(亜人)と地上の人間達は交易を行ったりお互いの土地に住むようになったりで、平和な世界となっています。王国の学園でも穏やかな日常が送られており、地下世界の探索も授業の一環として取り入れられています。
 そんな中、穴ポコ学園2年生のオースティンとシャーロットは新入生2人を勧誘し、4人で部活を立ち上げて課題に取り組む事になりました。これが冒険の始まりとなります。

 平和と言っても地下世界には魔物が存在するため、戦闘が中心のRPGとなります。最初は「小課題」という実質的なチュートリアルを受けながら、実際に戦闘を行いシステムに慣れていく事になります。
 1年に一回だけ「大課題」という特別な課題を受けることができ、これをクリアする事でストーリーが進んでいき、加えて最初の内は新しいクラスが解放されるなど、様々な要素が解禁されていきます。

 ゲームは拠点パートと戦闘パートに分かれます。
 拠点パートでは武器やアイテム、アクセサリの購入のほか、各メンバーのクラスや装備、スキルの設定を行えます。なお装備品は武器とアクセサリのみで、防具は存在しません。その分武器は数も種類も多く、加えてスキルもセットされています。強化上限やセットされるスキルはランダムで、質の良い武器を入手して強化していく事も重要となります。

 本ゲームのメインとなる戦闘パートは不思議のダンジョンのイメージに近く、自分が動くと同時に敵も動くようになっています。(空腹度の概念はありません)
 大きく違うのは敵味方お互いに最大4人までのパーティーを組む点と、戦闘に入るとターン制コマンドバトルに切り替わる点、近接攻撃の範囲が上下左右の4方向のみと言う点です。
 また、各キャラクターは毎回レベル1から開始する事になりますが、キャラクターが就いているクラスの習熟度(段位)でステータスが底上げされるので、同じレベル1でも段位によって基礎能力が大きく変わっていきます。

 戦闘時は毎ターン「見切り」というコマンドが使える事が特徴で、これを使う事で敵のある程度の行動を知ることができます。当然ながら前衛が狙われやすいので、攻撃対象となっているキャラはガードするなり味方の回復を頼りに攻撃するなり(戦闘の行動順は画面右のゲージで確認できます)効果的な戦略を取ることが出来ます。
 武器でも少し触れましたが、各キャラクターは武器にセットされたスキルや、クラスに備わっているスキルを使うことが出来ます。(所持するだけで有効になるオートスキル(いわゆるパッシブスキル)も存在します)
 これらスキルを使う事で戦闘を有利に進められますが、スキルの使用はAPを必要とします。APはガードする事で回復しますが、ガードを連続で行うほどAPの回復量も高くなっていきます。強力なスキルはAPを大きく消費し、またチャージ時間も設定されているため連発はできません。ここ一番で使って、再びAPが貯まるまでガードに徹する事も重要になります。

 不思議のダンジョン同様、周囲を囲まれると非常に危険です。本ゲームは近接攻撃が4方向なので一度に隣接する敵は少ないですが、斜め移動ができないので逃げ道の確保が困難です。地形を上手く使って、また穴を掘ったりバリケードを設置して通行を妨害するスキルも活用して有利な位置取りを心掛けないと、序盤でもかなり苦戦する事になります。

 最後に、学園が舞台という事でキャラクター達は3年生の最後に卒業していきます。(初期キャラのオースティンとシャーロットは2年生からのスタートなので、2年後に卒業)
 卒業したキャラクターは当然居なくなってしまうので、かなりの戦力ダウンとなります。ただデメリットだけでなく、卒業するキャラクターが後輩の為に「クラス指南書」を残していく事ができます。
 基本的なクラスはすべて10段が上限なのですが、卒業するキャラクターの段位次第でこの上限以上の特別なクラスが生成可能です。例えば10段に到達したキャラクターの指南書は13段が上限のクラスを生成し、13段まで到達したキャラクターなら16段が上限のクラスと、基本的に到達段位+3の指南書を残す事ができます。
 限界以上の段数になる事でステータスが引き上げられるほか、上限段位が高いほど段位の成長にボーナスが付き、成長が早まります。上位クラスにチェンジするためには下位クラスが10段に到達する事が条件となっているため、早々に下位クラスを10段に到達させるためにも有用となります。

 このように、キャラクター自体を育てるというよりも、彼らの所属する部そのものを強くしていく事が攻略の鍵となるバランスになっています。

良い所

戦略性を問われる戦闘パート

 概要でも触れましたが、戦闘パートのコマンドバトル+不思議のダンジョンのシステムの融合が上手くいっており、なかなか考えられるバランスとなっています。

 雑魚相手でも囲まれると厳しいため、囲まれないための施策(穴を掘る、バリゲートを設置する)が重要になります。ただし、穴を掘る場合も条件があり、地形が何もない状態でなければなりません。
 本ゲームでは地形には様々な特殊効果を付与でき、穴を掘る以外にも炎上させたり、毒沼を作るなどができます。そういった地形は上に居るだけで継続ダメージを受けたりステータス異常を引き起こせたりと有利に働くので、ついつい作りたくなってしまいますが、その状態になると穴を掘ることが出来なくなってしまいます。また、敵もこのような地形操作を行ってきます。
 自分のいる場所の有利を確保しつつ、いかに敵の接近を阻害して立ち向かうか。この辺のプレイ感覚は他のRPGではあまり見られない新鮮なものでした。

 他にも最初はパーティーがレベル1で始まるため、小課題のような短期決戦の場合は強敵に当たる前にレベルを上げておきたいところです。属性攻撃に弱い敵も居るので、最初に与しやすい敵から倒して強敵は可能な限り足止めし、最後に他の敵の邪魔が入らない状態で対決したいところです。このような戦略が上手くはまり、格上のボス敵を圧倒出来た時は手応えを感じることができます。

育成が楽しい

 キャラクターは3年間で卒業してしまいますが、前述のクラス指南書以外にも、各種戦利品はすべて部室に残る事になります。優秀なスキルの付いた武器は強化を重ねつつ、何年も部員たちに愛用されることでしょう。

 またゲーム概要では省略しましたが、戦闘パートの戦利品として、その時のパーティーメンバーのクラスに応じて「スキルの書」というものがドロップされます。これはキャラクターの「EXスキル」枠に装備する事ができます。
 例えば回復系のスキルをEXスキル枠に装備すれば、どんなクラスでも回復スキルを使うことができます。現在のクラスの強みを最大限発揮するか、攻撃も回復も一通りできる万能タイプを目指すか。この組み合わせを考えるのも楽しいです。
 また、武器同様スキルもその強さはランダムで、同じ威力でも消費APが異なったり、チャージに必要なターン数が異なったりと、一概に高レベルなスキルが良いとも言えません。状況に応じて取捨選択が必要となってきます。

メーカーがしっかりユーザーの声を聞いている

 本ゲームの発売日は2021年12月16日だったのですが、その後ツイッターにより攻略情報の補足説明や不具合報告を積極的に受け付けており、翌4月にはバグ修正およびユーザーの要望を聞き入れた大規模なアップデートを行いました。その後も不具合報告はきちんと受け付けており順次対応予定との事で、作って終わりではなく、しっかりブラッシュアップしていく姿勢なので好感が持てます。
 現時点で気になる点も、もしかしたら今後のアップデートで解消されるのかも知れません。

賛否両論っぽいところ

卒業というシステムに慣れる必要がある

 本ゲームの一つの特徴である卒業。どんなにお気に入りのキャラクターでも、すぐに別れの時が来ます。戦力として主力だった場合、その後の課題が一気に厳しくなる場合もあります。システム的には「俺の屍を越えてゆけ」に近いものがあり、キャラクターを育成していくゲームではない、という点には注意が必要です。
 個人的には本ゲームのキャラクターデザインは気に入っており、お気に入りのキャラクターをずっと使いたかったな、という気持ちも少しあります。キャラクターの印象という点では学園や城関係者の方が残りやすく、プレイヤーキャラクターは傭兵のように定期的に置き換わっていく戦力、あるいはクラス指南書を残す存在という位置付けになってしまうので、ここは好き嫌いが分かれると思います。

 ただ、主力の3年生が抜けた後の後輩メンバーでどう活動していくかと言うのは現実の部活でも起こる話で、卒業前から後輩の育成をしておくなど戦力の再構築を考える必要がある点は マンネリ化、作業化を防ぐ上で効果的に働いているのは間違いありません。

ドロップが狙いにくい

 戦闘パートでは画面右上にレアリティスターゲージと宝箱アイコンが存在し、敵を倒す等でゲージが増え最大になるとその時のレア度と宝箱アイコンに応じた報酬を受け取れます。その際レア度は減ってしまうため、なかなかレア度を高めることが出来ません。
 宝箱アイコンがクラウン(お金)、もしくはマテリアル(鉱石)の場合に報酬を受け取るとレア度が減らないので、レア度を高めるには宝箱アイコンがこの2種類のどちらかの時にレアリティスターゲージを最大にする必要があります。
 宝箱アイコンは「ガードしないで敵の攻撃を受けるとランダムで内容が変わる」という仕様です。そのためレア度を上げようと宝箱の種類を変えてみたいのですが… 実際やってみると分かりますが、そう簡単にはいきません。
 この辺は結局運任せになってしまうので、個人的にはこのシステムはあまり意味は無いかなと感じました。ですが、筆者が下手なだけで、きちんと活かせる方もいらっしゃると思います。

独特なノリ

 まずタイトル名からして奇妙な印象を受けると思います。また地下世界には魔物こそいますがそれ以外の亜人たちと人間の関係は概ね良好で平和な世界ですので、全体的に軽いノリとなっています。
 しかしその一方でストーリーの根底は意外とシリアスなものであり、その温度差も相まって独特な雰囲気になっています。大課題も割と真剣な理由で戦う事もあれば、訳の分からない理由で戦う羽目になったりと良くも悪くも予想できないもので、筆者は楽しめましたが、人によっては呆れるような展開もあると思います。

 また、課題クリア後には新聞という形でメンバーの活躍が記事になるのですが、そこに掲載されている4コマ漫画に非常に力が入っており、なぜかオプションに大喜利モード(吹き出し部分に好きなテキストを入力できる)まで実装されており、失礼な言い方ですがこんな所に力を注がなくても、と思ってしまいました。

イマイチに思うところ

大課題が長いうえに気になる点が多い

 本ゲームは敵味方が共にパーティーを組む関係で、一つの戦闘が長くなりがちです。また、スキルで必要なAPもガードによって簡単に回復できることもあってか、全体的にAP消費の激しいスキルが多く、戦闘を早く済ませようと強力なスキルを使ってしまうと、結局その後で2~3ターンはガードを連続で行わなければならない等、手間のかかる要素が多いです。

 元々がそのような仕様のため、大体10マップくらいが連続する大課題はかなりの長丁場を強いられます。少なくとも2時間はかかると考えておいた方が良いです。
 それだけでなく、大課題中はいくつか気になる点が出てきます。

 例えば大課題中の探索要素はあまり多くはありませんが、それでも鉱石の回収ができたりストーリーの伏線となる石碑などがあるので、やはり隅から隅まで確認しておきたいところです。その場合、無限湧きの敵キャラが非常に邪魔になります。またマップの出口は明記されている場合も多いのですが、あるポイントで唐突にイベントが始まって探索を強制的に打ち切られることがあります。
 大課題進行中はマップを戻れないので、ちょっと困った仕様です。もちろんあらゆる課題は何度も繰り返し挑戦できるのでもう一度やれば良いのですが、一年に一回しか受けられない上に長いのでやる気になれません。

 また、マップ中で突然敵が湧いて囲まれる事があります。不思議のダンジョンで言うモンスターハウスに強制的に飛ばされるようなもので、対処しようもなく囲まれてしまいます。おそらく有利な場所取りをさせないための工夫だと思うのですが、これはちょっと納得がいきませんでした。

武器屋の仕様までランダム要素になっている

 拠点パートに武器屋(正式名称は「ババアの店」で、正直どうかと思いますが)があり、武器やアイテムの売買から武器の強化、不要な武器の溶解(鉱石が手に入る)、新しいスキルの付与など様々な事が行えるのですが、なんとこの結果もランダム要素となっており、店主の状態(ヒザ、健康、機嫌)によって変わるというもの。
 大課題の前に最大限準備をしたいと思っても、店主の状態が悪いと満足の行く強化が受けられないという事も起こり得ます。ただでさえシステム的に覚えなければいけない事が多いのに、こんなところにまでランダム要素を入れてシステムを複雑にする必要は無かったかなと思います。

まとめ

 単にキャラクターを育てるだけでなく、将来の事も考えて部全体が強くなるように導いたり、戦場での駆け引きなど、他のゲームに無い光る要素は多々あり、楽しめます。
 ただ、ガードの機会が多く戦闘が長引きやすいシステム、そして「まだ終わらないの?」と感じてしまう程の長時間の戦闘を強要される大課題と、欠点が無いわけではありませんので、キャラクターをずっと育てていきたいとか、ストーリーを気軽に楽しみたいという方にはあまりお勧めできません。

 RPGに何を求めているかで、合う合わないが非常にはっきり出るゲームだと思います。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からタイトル画面まで 約8秒最初のメーカーロゴ表示はスキップ不可
その後のロードは一瞬

 起動も早く、ゲーム中にロードもほとんどなく実に快適です。不具合への対応と言い、他のインディーズゲームにも手本として欲しいレベルです。

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