クロステイルズ

レビュー
出典:My Nintendo Store

しっかり作られた好印象のタクティカルSRPG

 クロステイルズは、基本に沿った王道的なタクティカルSRPGです。発売はケムコとなっておりますが、ライドオンジャパンが開発に参加しているようです。
 ライドオンジャパンと言えばスマホや3DSの頃から同ジャンルのゲームである「マーセナリーズシリーズ」を作り続けてきたメーカーで、Switchにも展開されています。
 本作もマーセナリーズシリーズの面影が随所に見られるのですが、定価がこれらの作品より倍近く高いせいか、完成度はかなり高くなっていると感じました。

戦闘中の画面。この画面を見ただけで気になってしまう方なら迷わず買い
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クロステイルズ Switch版
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ゲーム概要

 まず世界観ですが、獣人たちが存在する世界(普通の人間は居ないようです)で、犬族の『ランヴェルフルト王国』と猫族の『ヒディーク共和国』が長い間戦争を繰り返している状態です。
 ゲーム開始時、プレイヤーはこの犬族と猫族のどちらか一方を主人公に選びます。
犬族の方は真面目な軍人の印象が強い青年フェリクス、猫族の方はとある部族の姫であり、(猫なのに)「じゃじゃ馬娘」と揶揄される活発な女の子、シャイマーとなります。

主人公選択。要は犬と猫の戦争である(と言いつつ、後半は第三の種族も登場)

 ストーリーの方は実に王道で、最初に説明した通り犬族と猫族の戦争がメインとなります。それぞれの視点から見た戦争、という形でストーリーは二つに分かれるわけですが、それに加えて途中で分岐が発生します。この分岐は一週目のプレイでは片方しか選べず(選択肢にロックがかけられている)、クリア後に別の分岐が解禁されます。
 そのため、すべてのストーリーを見るには四周のプレイが必要となります。

 ゲームは最初に述べた通り、オーソドックスなタクティカルSRPGとなります。全体マップは存在しますが移動などの要素は無く、ゲーム中は「買い物や編成などの出撃準備」→「戦闘開始」の流れをひたすら繰り返す事になります。
 ストーリーは章立てで進んでいきますが、章によっては会話のみで終わるものもあり、毎回戦闘を行うわけではありません。章が進んでいくと新しい仲間の他、装備品の改造や隠しスキルなど、様々な要素が解放されていきます。
 また一度クリアした章は、同じマップで敵の配置の異なるフリーマップとして何度でも再戦可能です。

マップ画面。実にシンプルで、特にマップ内を移動するような要素も無く淡々と進む


本作の代表的な要素をまとめると以下のようになります。
・汎用キャラの雇用が可能
・キャラロスト無し、HPがゼロになっても復活猶予が存在
・スキル取得のリソースがゴールド

以下、簡単に触れていきます。

汎用キャラの雇用が可能

 どちらの主人公を選んでも最初は主人公とその相棒、さらに汎用キャラ2~3人で始まります。その後ストーリー進行に伴い固有キャラが参加するのですが、それ以外にも汎用キャラの雇用が可能となっています。
 固有キャラと汎用キャラの違いは、専用ジョブの有無と成長タイプとなっています。

 固有キャラには専用ジョブと成長タイプが固定で存在するため、普通に進めていくと育成の幅はある程度限定されます。
 一方で汎用キャラは「一般兵」という特徴のない専用ジョブ(やや物理寄り)が用意され、成長タイプも雇用時に選べるため、物理寄りにしたい、魔法寄りにしたいなど、パーティーに不足している役割をあてがう事ができます。(ただし自由なカスタマイズは出来ず、表示される雇用リストの中から選ぶ方式です)
 その気になれば、汎用キャラメインで攻略を行う事も出来ます。

キャラロスト無し、HPがゼロになっても復活猶予が存在

 こちらはマーセナリーズシリーズから受け継いでいる要素で、味方キャラにロストの概念は無く撤退扱いとなります。
 その撤退についても、「HP0=撤退」ではなく、一度その場に倒れ込んで戦闘不能状態になります。この状態は回復魔法やアイテムなどで蘇生が可能です。
 戦闘不能のキャラの頭上にはカウントが表示されており、ターン毎に減少していきます。このカウントが0となると撤退となります。撤退してしまうとその戦闘中の復帰が不可能となり、クリア後の経験値ボーナスも貰えなくなってしまいます。

 カウント数は難易度で変動し、一番難しい難易度Maniacでは2ターンしか猶予がないため、撤退無しのクリアはなかなか難しくなっていきます。

スキル取得のリソースがゴールド

 本作を最初に遊んで、一番びっくりした要素です。
 各キャラは固有ジョブの他にメインジョブ、サブジョブ(キャラレベル10以降で解放)を設定できるのですが、それぞれのジョブにはスキルが用意されています。

 スキルツリーから新しいスキルを習得したり、既存のスキルを更に強化できるのですが、その解放に使うリソースがゴールドとなっています。つまり、ショップで何か買うのも、キャラの育成も、ゴールドに一本化されているわけです。
 ジョブさえ解放されれば、未使用のランク1時点でもゴールド次第で全スキルを最大強化も可能なので、ここぞというジョブにお金をつぎ込む事で一気にキャラ強化もできます。

 なお、ジョブは戦闘や戦闘勝利後のボーナスで「JP」という専用の経験値(おそらくジョブポイント)が加算されていくのですが、そのポイントは完全にジョブランクを上げるためだけのもので、育成には使いません。(特定のジョブランクが上がると新たなジョブが解放されるので、JPの取得自体は攻略上重要な要素です)


上記の他にも改造や「黄金の骨/魚」集めによるレア交換など様々な要素があるのですが、その辺は実際に遊んで確かめてみてください。

良い所

テンポが良い

 基本的なゲームの進行が「ストーリー→戦闘」の繰り返しで余計な要素が存在しないため、戦闘と育成に集中することができます。もちろんイベントスキップもあります。
 また、メインとなる戦闘も全体的な動作が速め、演出も短めにまとめられており、繰り返し遊ぶのが苦になりにくい作りとなっています。
 稼ぎの為に簡単なステージを繰り返し遊ぶ場合のためにオートモードも用意されており、格下相手なら放置でかなり早くクリアできるようになっています。

 ストーリー自体もこれと言って複雑な謎が絡んでいるわけでもなく、かなり単純なお話です。主人公たちの性格も至って真面目で(猫族の主人公は少々身勝手な所もありますが)、実に王道な感じなので戦闘に専念できます。下手にストーリーを凝ろうとして白けるよりは良い舵取りではないかと思います。
 前述の通り分岐はあるのですが、一週目クリア後に選択肢の解禁がアナウンスされるなど明確に解放条件が提示されるので、隠し要素に悩む心配も有りません。

 ただし、筆者は本記事執筆時点で犬族ルートのみクリアしていますので、猫族ルートで最終的にどのような展開となるか把握できておりません。その点はご注意ください。

稼ぎ無しの場合は力押しでは進めない、対策が必要な難易度

 本作はキャラが擬人化した犬猫と見た目も相まって難易度は低いのかなと思いきや、意外と難しい調整がされているようです。途中で負けイベントかと思うような戦闘も存在し、様々な工夫が必要でした。
 筆者は難易度Hardでプレイしたので他の難易度は分かりませんが、ストーリー以外のフリーバトルを各一回ずつプレイしただけの露骨な稼ぎをしなかった状態で、一周目をぎりぎりクリアできる位の歯ごたえのある難易度でした。(難易度はEasy/Normal/Hard/Maniacの四段階)

キャラの立ち絵は可愛いし、ユニットも三頭身にデフォルメされている。その見た目とは裏腹に難易度は硬派

 難易度を高めている要因は、基本的に戦闘は敵の数がこちらよりも多いこと、そして何より、同レベル、同ジョブの敵が複数存在する事です。
 本作ではターン内での行動順は各キャラの俊敏依存となるのですが、同レベル、同ジョブの場合は俊敏が横並びとなるため、それらの敵が連続して行動する事になります。
 そのため慣れない内は、味方が固まっている所に範囲攻撃を連続でくらい、回復する暇もなく壊滅させられることになります。特に敵と味方の位置が近いマップだと、初期配置からこちらが行動するよりも先に範囲攻撃を行われ、一度も行動することなく戦闘不能、なんて事も起こります。

 行動順をしっかり把握し、前衛の敵を釣って一度に対応する敵を減らしたり、囮を使って敵の集中攻撃を逸らす等の対応をしていく必要があります。
 幸い味方の出撃枠も最大8枠と多めなので、各キャラの役割分担をしっかりと行い倒れた場合に備えて蘇生役を後方に待機させておくなど、様々な戦略が考えられますので、多くの攻略方法が存在すると思います。

賛否両論っぽいところ

一撃死と確率で左右されやすいバランス(特に二週目)

 良い所で程よい難易度と書きましたが、本作はHPが0になってもすぐには撤退しない仕様のためか、敵も味方も中盤以降は一撃がかなり重くなっていきます。特に弓系は脅威で、高さ補正(高い所から攻撃するとダメージ増加)がある上に、基本的に敵の弓兵が高所に陣取っているマップが非常に多いです。そのため魔法キャラを迂闊に近づけようものなら、通常攻撃でも一撃であっさりやられます。

 他にも物理攻撃にはクリティカルも発生するので、防具を固めた物理職でも敵の強力なスキル攻撃にクリティカルが発生したらやはり一撃と、他のタクティカルSRPGのバランスと異なり「一撃で倒されることが前提のバランス」である事は好き嫌いが分かれるかもしれません。蘇生役が非常に重要となるバランスです。

 という事で防御力の値を高めるよりも、属性耐性を高めて無効にしたり、確率でHP1で生き残るガッツ、物理攻撃を確率で完全回避できるパリィ、やはり確率で魔法攻撃を跳ね返す魔法反射など、様々な防御スキルに頼る必要が出てきます。特にガッツはHP1の状態からでも発動するため、運さえ良ければ連続攻撃をすべてガッツで生き残る事も可能です。
 これは敵についても同じで、命中率100%で安心して攻撃したらパリイされたり、ヒーラーがガッツでしぶとく生き残って完全回復されたりと、少々いらいらする展開が有ります。

 ただマニュアルにも書いてある通り、一部のスキルやアイテムによる攻撃はこれらの特殊効果を回避できますし、特にアイテムは命中率100%かつ誰でも使えるので、攻略の糸口になるでしょう。

 最後に二週目の話ですが、分岐後のルートが初回クリア前提という事もあり、より難しくなっています。犬族主人公の二週目でとあるNPC(操作は可能ですが、当然事前の育成はできない)の防衛を行う戦闘があるのですが、距離が大きく離れている上にNPCの側にはボスクラスの敵が配置されています。
 攻撃を二回も受ければ倒れてしまい、かと言って救出に行こうとすれば袋叩きに遭うという容赦の無い難易度で、これは流石に意地悪が過ぎるのではないかと思いました。(もちろん対応策はあり、結局味方一人を犠牲にして乗り切りました。次は撤退無しで挑戦してみたいです)

一部キャラ以外は、ジョブをマスターするメリットが少ない

 本作は、ジョブランクがJP獲得で成長し、5に到達するとジョブマスターという扱いです。
 ところが、ジョブランクが1の(つまり、転職可能となった)時点でそのジョブのスキルはすべて解放されるので、強力なパッシブスキルだけ習得したら用無し、というジョブが結構あります。
 そのため、ジョブランクを上げる意味は転職条件を満たす位しかなく、マスターしても追加スキルが入手できるような要素はありません。

 例外として、主人公と汎用キャラには「ジョブマスターしたジョブの数に応じて能力アップ」というパッシブスキルがあるため、能力の底上げのためにジョブマスターを増やした方が強くなります。ただし、主人公はともかく汎用キャラの能力アップ率は少々渋めで、ただクリアするだけなら他の固有キャラ同様、優秀なパッシブスキルを取得するために転職を優先した方が良いです。

 転職条件さえ満たせば(あとゴールドさえあれば)そのジョブの全スキルを解放できるのは育成は楽で良いのですが、せっかくジョブランクという概念があるので、ジョブランクを上げる事で隠しスキルが解放されたり、メインジョブにジョブマスターを設定したらステータスに補正がかかるなど、何らかの特典が欲しかったと感じました。

イマイチに思うところ

周回が少し面倒

 すでに記述した通り、一週目をクリアするとストーリー分岐が解放され、もう一つのルートに進めるようになります。
 しかし、二週目はクリア時の道具とゴールドは引き継ぐものの、キャラのレベルやジョブ、スキル、追加雇用した汎用キャラはリセットされ、1からのスタートとなります。
 強力な装備も引き継げるので仮に難易度Maniacに変更したとしてもストーリー分岐の所までは負けようがないのですが、あまりにも消化試合なので分岐の所からスタートでも良かったのではないかと思います。

 ついでに言うと二週目はフリーバトルEXというチャレンジ戦闘も解放されるのですが、推奨レベル55と二週目に入ってすぐ挑戦できるものではないので、せっかく解放されても放置したままストーリーを進めていく事になり、お預けを食らった感じになります。(敢えて低レベルで挑戦したい猛者も居るかも知れませんが)

あともう一歩欲しい機能

 それほど大きな問題では無いのですが、本作の完成度が高いだけに操作面などで気になってしまう部分があります。

 戦闘の難易度が高めのため、マップによっては特定の属性に特化した構成などが必要になる場合があります。(ボスが火属性を使ってくるので、このマップだけ全員の火耐性を上げたい、など)
 一方でフリーバトルで稼ぐ場合は、各種ドロップ率を向上させて臨みたいものです。
 このようにマップによって装備やパッシブの構成などが大きく変わるゲーム性のため、装備やパッシブスキルのセット登録機能が欲しかったと感じました。

 後は、戦闘マップなどで右スティックの左右で回転、上下で拡大縮小なのですが、ステータスの確認が右スティック押し込みのため、誤操作で勝手にマップ回転や拡大縮小が発生してしまいます。
 環境設定からボタンのコンフィグは可能なのですが、右スティックの操作については変更できないため、できれば右スティックによる操作のカスタマイズ、あるいはマップ操作の無効化が欲しい所でした
(個人的には拡大縮小する必要を感じなかったですし、マップ回転はZLZRボタンでも行えます)

 最後に、これは筆者のスキル見落としの可能性もあるのですが…マップ内に配置される罠の場所を、スキル「看破」で見破る事は出来るのですが、解除する方法が無いように思います。
 場所が分かっても踏むと作動してしまうため結局通行の邪魔となり不便に感じたので、見破った後は無効になるとか、罠を解除するスキルを用意して欲しかったところです。

まとめ

 タクティカルSRPGは数多くの作品が出ていますが、その中でも本作は王道を攻めながら高い完成度を実現した作品となっています。
 私は難易度EasyやNormalで遊んでいないので初心者向けとしてはお勧めかどうかの判断が下せませんが、ある程度このジャンルを遊んできて、難易度の低さに物足りなさを感じている人、汎用キャラを自分の好きなように育成したい、探索などの戦闘以外の余計な要素は不要(いずれも筆者の事ですが)、という方にはお勧めできます。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からタイトル画面まで 約15秒起動後、タイトル画面が表示されるまでの時間
途中から再開/続きから 3~4秒「途中から再開」は戦闘中の中断データをロード
「続きから」はインターミッションでのデータをロード
戦闘終了後の暗転から
マップ画面に戻るまで
3~4秒戦闘勝利後に獲得ボーナスが表示された後や、
戦闘から離脱(リタイア)した後のロード

 起動時のロードは短めの上、プレイ中にロードを長く感じる事は無くストレスなく遊べるため、特にこの手のジャンルにはありがたい作りです。
 なおロードの待ちでは無いのですが、ちょっと失敗してやり直したい時にメニューを出すには自キャラの番が回ってくるまで待たなければならない、という所が少し不便でした。気になったのはそれ位でしょうか。

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