Wildfrost(ワイルドフロスト)

レビュー
出典:My Nintendo Store

一手のミスで崩壊する詰将棋的デッキ構築型ローグライク

 本作はいわゆる「デッキ構築型ローグライク」で、本サイトでも紹介済みの「Slay the Spire」(以後StS)が代表的なゲームとして挙げられます。やはり何かとStSと比べられてしまうこのジャンルですが、本作は決して後追いだけではない独自の要素やテンポの良さが備わっており、StSフォロワーとしては上位に食い込む作品ではないかと思います。

ゲーム概要

 まず世界観を公式の照会文から引用します。

――世界が雪と氷の嵐「ワイルドフロスト」に襲われて数百年。
今や永遠の冬に立ち向かえるのは、最後の砦「スノードウェル」に暮らす生存者たちだけとなった…。

 上記の通り、氷河期のようになってしまった世界で滅びを待つだけの人類という、ディストピアなストーリーとなっています。ゲーム中でも語られますがこの寒さには原因があり、それを解明して永遠の冬を終わらせるのが目的となっています。

デッキ構築型ローグライクとはいえ特殊なシステムも多いので、特に重要な違いを列挙してます。

  • 戦闘は敵味方6体まで同時に参加できる多対多のフィールドで行う(移動可能)
  • 敵味方共にターン経過で減るカウントを持ち、ゼロになると攻撃する
  • 1ターンでプレイヤーが出せるカードは1枚(例外有り)、コストの概念無し
  • カードを使ってターンが進んでも手持ちのカードは残る
  • 出すカードが無くなったら配り直しをするが、
    その際に出したカードが一定枚数以上ならターンが進まない
  • 敵には増援が存在し、専用のカウンターがゼロになる事で追加される

 上記の通り、敵は戦闘開始直後に配置されているものだけでなく、ターン経過で後から増援として追加されていきます。増援の最後にボスが現れ、それを倒すことで勝利となります。なお、場合によっては最初からボスが配置されている場合もありますが、そのボスさえ倒してしまえば増援が何人いようと勝利扱いで戦闘が終了となります。

最大6対6で戦うバトルフィールド。それぞれがカウンターを持ち、ゼロになると攻撃を行う

 味方側は最初に選ぶリーダーと仲間1人でスタートし、道中イベントで加えることで最大3人まで戦闘に出すことができます。仲間もカードとなっており、ダメージを受けた場合は山札に戻す事で回復させることができます。4人目以降の仲間は控え枠に入り、デッキを圧迫しない代わりに戦闘には参加できません。(控え枠とレギュラーは戦闘前なら入れ替え可能です)
 これだけではリーダー含め4人ですが、仲間以外にもフィールドに置くことで様々な効果を発揮する「クランカー」や倒されてもカードがある限り何度でも呼び出せる「シェイド」という特殊な仲間も存在します。

 先程も書いた通り敵味方それぞれがターン経過で攻撃するため、同ジャンルの他ゲームと異なり、プレイヤーが何もせずターンを進めるだけでも勝手に戦闘が行われていきます。とは言え任せっきりではあっという間に全滅しますので、危険な敵を行動前に排除したり、あるいは無力化するなどしてアシストするのが本作の特徴であり、このジャンルに慣れている人が最初に戸惑いやすい所でもあります。

 一回の戦闘で敵が何体も出てくるため、戦闘は時間が掛かります。それを考慮してなのか、本作は全体の戦闘回数自体がかなり少なく、1ゲーム通して10戦もせずにゲームクリアとなります。
 戦闘以外の道中は仲間やカードを集めたり、ショップを利用したりします。一本道ではなく二つの分岐から選ぶ方式で、今の自分のパーティーに足りないものを見極めながら選択する必要があります。

道中は二つのルートからイベントを選んで戦闘に臨むことになる。 仲間を取るか、カードを取るか?

 通常戦闘の戦利品はお金だけですが、特定のボス戦では特別な報酬を得る事ができます。道中でも手に入る「お守り」や「クラウン」(共に後述)の他、敵増援のカウンターを遅らせたり、戦闘に参加させる仲間を3人から4人に増やすなど、ボス報酬限定の効果も手に入ります。

 ローグライクでは必須とも言える解放要素は、ゲーム中の各種行動(敵を指定数倒すなど)によって新しいイベントや仲間が解放されるほか、初回ゲームクリア後に解放される周回要素(難易度上昇のルールが少しずつ増えていく)があります。
 このクリア後の周回が一定値に達すると、通常のラスボス戦の後に裏ボスが登場し、これを倒すことでエンディングとなります。

ゲーム中に特定の行動を達成することで新しい仲間が増えるなどの解放要素が存在する

良い所

軽快でテンポが良く、奥の深い戦闘

 Switchのゲームの中には、ロードが長かったり処理落ちが多発するゲームが少なくありません。携帯機でもあるが故のスペック不足は否めないのですが、本作ではそういう事が全くなく、軽快に動作します。
 ローグライクのように周回が前提のゲームにおいて、このような軽快さは改めて重要であると気付かされます。

 また、戦闘も敵の数が多いために時間はかかるものの演出がシンプルでストレスが無く、それでいて全体攻撃で複数の敵をまとめて倒せた際の爽快感はかなりのものです。
 マップも非常に簡素化されていてイベントや戦闘は少ないですが、周回が苦にならないための割り切りとして歓迎すべき点だと思います。

 また、多対多の戦闘もきちんと練られており、仲間の配置を変える事で敵の攻撃を体力の高い仲間で受けたり、攻撃を受ける事で発動するスキル狙いで敢えて攻撃されに行ったりと、色々な戦術があります。
 仲間の配置換えは無制限に行えるのも非常にありがたい要素です。

選択する種族で大きく変わる戦術

 ゲーム開始直後は選べるリーダーは「スノードウェラー」という基本的な種族のみなのですが、進行に伴い
 「シェイド」という仲間を召喚して戦う「シェイドマンサー」
 様々な「クランカー」を使いこなす「クランクマスター」

 という二つの種族を解放できます。これらの種族はカードセットが違うだけでなく道中仲間になるキャラも異なり(種族共通の仲間も存在する)、戦術も大幅に変わります。この種族のバランスが非常によく練れていて、特定の種族でないとクリアできない、というような優劣も無くまったく違ったゲームバランスで楽しめるため、周回に飽きが来にくい作りになっています。

強化要素(お守り、クラウン)が奥深い

 今までの説明で強化要素にあまり触れてきませんでしたが、これも本作が同ジャンルのシステムと比べて良く練られているポイントの一つです。「お守り」と「クラウン」が強化要素に当たります。
 まず「お守り」ですが、道中やショップのガチャ、ボス討伐報酬として手に入ります。お守りには様々な効果(攻撃力+2など)が設定されていて、これを仲間もしくはカードに付ける事で対象を強化できます。
 この強化が非常に奥深く、アタッカーの攻撃力を増強するような順当な強化だけでなく、本来前線向きでない仲間の体力を増強して前線の壁にしたりと戦局を大きく変える可能性を秘めています。
 本作は道中が短いため、なかなか理想的な仲間やカードが集まりません。しかしお守りを有効活用する事で思わぬ強化ができたりします。

 続いて「クラウン」はショップやボス討伐報酬として手に入り、仲間やカードに装備する事で戦闘開始直前に登場させることができます。
 このタイミングはすべてのカードを使い切るまでターンが進まないので、敵に攻撃される事なく仲間の配置や攻撃などを行う事が出来ます。
 カードの中には「ランダムな味方のステータスを上昇させる」という効果を持つものがあったりするのですが、強化したい仲間とこのカードにそれぞれクラウンを装備させることが出来れば、その仲間を確定で強化できます。
 他にも、強力な全体攻撃カードにクラウンを装備させれば戦闘開始前に敵パーティーに大打撃を与える事も可能になるなど、クラウンが戦術に与える影響は非常に大きく、本作らしさの一つとなっています。

賛否両論っぽいところ

ちょっとしたミスで壊滅するシビアな難易度

 敵が複数存在するうえ、全員が独自のスキルやカウンターを持つ結果、慣れない内は展開の把握が非常に難しいです。慣れてきたつもりでも、うっかり特殊効果を見落としてリーダーがやられてしまう事が多々あります。特に周回で難易度が上がってくると敵もお守りを付けるようになるため、予想もしない敵から大ダメージを受けたりするので、難易度としては高いです。

慣れない内に起こりやすい、ほぼ全員の敵が同時に行動してしまう状況。こうなる前に敵のカウンターをずらしたい

 また、注意すべきなのが反撃系のスキルです。味方側の攻撃カウントや攻撃範囲をしっかり意識していないとうっかり攻撃して倍返しを喰らったりします。そしてこの効果、困った事にちょっと見落としやすいのです。
 反撃系のスキルはカードに「!」のアイコンが表示されているのですが、攻撃してきた相手だけに反撃する「オカエシ」(プレイヤーがカードで攻撃すれば発動しない)、の他に攻撃されたら味方の誰かにランダムで反撃する(こちらはプレイヤーによる攻撃でも反撃が発生)、というように複数種類存在し、その違いは文章で確認しなければなりません。
 大丈夫だと思って攻撃したら反撃されてリーダーや攻撃の起点となる仲間が倒れる事故が多発しやすいので、それを歯ごたえと取るか理不尽と取るかは意見が分かれそうです。

 なお、Steamで発売された当初は難しすぎて評価が賛否両論になっていたそうです。その後のアップデートで少しずつバランスが改良され、現在は高評価となっていますが、それでも難しいと感じるので最初の頃のバランスはどんなものだったんでしょうね。

イマイチに思うところ

説明不足、少しとっつきにくい

 独自の味付けがされている本作ですが、そのせいで少し分かりにくい部分があるのは否めません。体験版は出ていますが、何だか良く分からない内にやられて自分には合わない、となる可能性もあります。
 実際、私は体験版の時点で楽しさが理解できず、しばらく購入をためらっていました。

 賛否両論の部分でも書きましたが、アイコンである程度判別できるものの、スキルは文章で書かれているので、しっかり読まないと発動タイミングを勘違いしたりと、注意力を要求され遊んでいて疲れると感じることもありました。

まとめ

 慣れるまで時間が掛かり、難易度が高くちょっとしたミスからも死にやすい本作ですが、非常に遊びやすく一周が短めという事もあって、ゲームオーバーになってもまたすぐに挑戦したくなる中毒性があります。
 分かりにくい部分は攻略サイトで探したり、プレイ動画を見たりすると新しい発見があるかもしれません。一度クリアまで到達する事ができたら、きっと本作の魅力に気付けると思います。 

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からタイトル画面まで 約15秒起動後のメーカーロゴをスキップした場合
(スキップ無しで約22秒)
タイトル画面から開始プレイ 約2秒

雪が舞うアニメーションで画面切り替え

裏でロードしている可能性あり

 すでに何度も書いてきた通り、プレイ中に待たされると感じることは無く、非常に快適です。これは他のメーカーも見習ってほしいですね。

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