評価したいけど面倒臭さが目立ってしまうボードゲーム風RPG
公式によれば、「ボードゲームとRPGを融合したアドベンチャーゲーム」との事で、その名の通りヘックスで区切られたボード状のマップ上をプレイヤーをすごろくのように動かしながら各種クエストを達成したり敵と戦ってレベルを上げていくRPGです。
ゲーム概要
ゲームモード(シナリオ)はいくつか存在し、そのうちの一つがタイトルにもなっている「フォー・ザ・キング」で、最も基本的なゲームモードとなっています。
それ以外のゲームモードはマップのほとんどが海だったり、ひたすら戦闘を続けていくものなどがあります。今回は最も基本的な「フォー・ザ・キング」におけるレビューを行います。
まず最初に、三人のキャラクターを選びます。最初から最後まで、この三人で冒険を行う事になります。ストーリーは世界が厄災に包まれつつあるので、厄災を打倒してその元凶となる悪の親玉を打ち倒す、という実に王道的なものです。
最初はお城からのスタートとなり、父王を殺され復讐に燃える女王(これも王道ですね)から近くの街への訪問を依頼されます。つまりクエストですね。そして新しい街に着くとそこでも新たなクエストを頼まれ…という繰り返しでゲームが進みます。
ゲーム開始時に選んだ三人ですが、常に一緒に居るわけではなく、個別に動かせます。所持金も別々になります。各キャラには違った移動力が設定されており、またその移動力も毎回ランダム性があって(後述)、全員の歩幅が合いません。マップには未探索部分がありますので、各々思い思いの方向を歩き回って探索地域を広げ…と行きたいのですが、当然マップ上には敵も出ます。
もし敵との遭遇時に他の仲間が居ないと一人で戦う羽目になるので注意しましょう。
このゲームの特徴として、ステータスがそのまま行動の成功率になっている事です。力、活力、知能など7つのパラメータが存在しますが、例えば力が80であれば、力を使う武器の攻撃成功率も80%となります。
チェックが一回だけならシンプルですが、複数回のチェックが必要なものもあります。特に魔法などは数回のチェックがすべて成功したら効果を発揮する、という仕様なので、仮に魔法に対応する知能が90で4回連続成功が必要な場合、成功率は実に65.6%にまで下がることになります。実際遊んでみると結構外します。
戦闘以外でもイベントや罠解除など、様々な所でチェックが発生しますので、常に運要素が絡みます。しかもステータス最大値は95なので、どんなに育てても常に失敗の可能性が付きまといます。
それを補うために、「フォーカス」という概念があります。キャラクターがそれぞれ持っているポイントで、これを消費すればチェックを1つ100%にすることが出来ます。なので、ここ一番、絶対に外せないような時を狙って使うのがこのゲームの肝となっています。
良い所
慎重に進めていけばしっかり強くなれる
色々運要素はあるものの最初の方は敵も弱いので、しっかり鍛えておけば少々運が悪くても何とかなります。
マップ中には街や敵だけでなくグッドイベントもあり、特にキャラクターに常に恩恵を与えてくれる聖域に出会えれば、ゲーム展開をかなり楽にできます。(例えば常に獲得コイン+20%の恩恵を受けられれば、驚くほどお金が貯まっていきます)ただし、恩恵は一度でも対象キャラクターが死ぬと効果を失うので、効果の高い恩恵は絶対死守しましょう。
このように、早い内から後々の展開に有利になる恩恵やアイテムを集めて行ければ、後半の敵の強さにも十分対応できるバランスになっています。(ただ、筆者はハードでクリアしたことはありません)
初めはとっつきにくく感じるかも知れませんが、理解できてくると楽しいゲームです。
賛否両論っぽいところ
パーティーが固定されやすい
ゲームを進めると色々な要素が解放され、プレイヤーキャラとして選べる職業も増えていきます。しかし、ゲームクリアを目指すとなると、必須なスキルや武器の関係で、パーティーが固定されやすいです。
まず何よりも必要なのはヒーラースキル。これは「薬草医」と「モンク」の初期スキルなのですが、このスキルがあれば本来は一人しか回復できない薬草を、パーティー全員が一気に回復できるというスキル。つまり、ヒーラーの薬草1個が3個分の価値を持つ、という事です。
一応、ヒーラースキルを習得できる装備品もあるのですが、それが狙った通りに出るかは運ですし、装備の自由度も無くなってしまうので、よほどのことが無い限り「薬草医」か「モンク」はパーティーに含まれることになります。三人のうち一人が実質的に固定というわけです。
また武器についても終盤はダメージを軽減する盾持ちの敵が増えてきて、ただの攻撃力自慢では思うようにダメージを与えられなくなっていきます。そうなってくると、敵の盾を無視できる「貫通」能力や敵の行動を阻害できる武器を使った方が有利になります。例えば貫通なら弓の多くに付与されているため、弓を有利に扱える狩人が攻撃面では有利になります。
とはいえ、上級者ともなれば、敢えてこれらのセオリーを無視した攻略も可能かもしれません。
状態異常が強力過ぎる
RPGにデバフはつきものですが、このゲームはかなり強烈です。
まず、どんなRPGでもまず出てくる毒(本ゲームでは「毒盛」)。これは毎ターンHP低下だけでなく、全ステータスの低下も引き起こします。そのため、戦闘がかなり不利になります。しかも重ね掛けもされてしまいます。
一応ターン経過で自然回復はしますが、積極的に回復するには街での治療か万能薬しかなく、しかも重ね掛けされていると万能薬1回では消せない事もあります。毒になる事で戦闘能力が低下し、戦闘が長引く事で毒ダメージの蓄積で瀕死に…という悪循環となるので、万能薬をたくさん持つよりは装備効果や恩恵などで毒無効の効果は付けておきたいところです。
また混乱も実に厄介で、使ってくる敵こそ少ないもののキャラクターが混乱すると戦闘から勝手に逃走する事があり、3人パーティーが2人に減るわけですから、まずその戦闘での勝ち目は無くなります。
装備品に混乱無効は有るのですが3人全員分の装備を揃えるのは難しいですし、万能薬で回復できてもその前に逃走してしまう(当然ながら逃走したら戦列に戻す手段が無い)ので、混乱使いとの対決は本ゲーム中でもかなり運任せの戦いになります。
イマイチに思うところ
とにかく時間がかかる
マップ移動が三人のキャラクターを一人ずつ動かす関係で、同じ操作を何度も繰り返す事になります。最初に書いたように、ばらけて探索するのはいざという時に一人で戦う羽目になってしまうので、ちょっと街に買い物に行かせる、とか限定的な状況は別として、基本的に全員一緒に行動する必要があります。せっかくキャラクターごとに歩ける距離も異なるのに、一番遅い人に合わせなければなりません。船に乗ると全員一緒に動けて快適なので、出来るだけ船を使って移動したいところです。
お金も一人ずつ所有するので、大きい買い物をする時は誰かにまとめる、と言うよりも基本的には最初から誰か一人にまとめておいた方が良いと思います。それでも結局は、他のキャラクターが街に寄る際に少し分けてあげないといけないので、この辺の管理も面倒です。
戦闘もこちらの数に合わせて三体編成である事が多いので、それなりに時間が掛かります。
ストーリー自体もそれなりに広い世界をほぼ全域まで冒険する必要があるので(マップは自動生成でもストーリー展開は同じです)、大体数時間は掛かってしまうでしょう。ゲーム終盤、特にラスボスで全滅しようものなら、もう一度やる気力が失せるかも知れません。
一応設定からスピードモードもあるのですが、一人一人のキャラクターを動かすという手間が無くなるわけではないので、ドラクエのようにパーティーまとめて自由にフィールドを歩けるRPGだったら、とゲームの根底を否定するような感想が出てしまいます。
まとめ
コツが分かってくるとちゃんと戦えるようになりますし、フォーカスを狙い通りに使えたり、全状態異常を無効化した理想のキャラクターを作り上げたりなど、面白い要素は確実にあるRPGです。
しかしその反面、どうしても操作の面倒くささ、テンポの悪さが気になってしまい、何度も遊ぼうという気にはなれませんでした。
元々はSteamのゲームの移植ですので、もしかしたらSteam版であればこの辺の感じ方は変わってくるかもしれません。
普通のRPGと一味違う良さがある事は間違いないので、時間が掛かっても構わないのでローグライクのRPGを遊んでみたい、と言う方は体験してみてはいかがでしょうか。
主なロード時間(演出による待ち時間含む)
計測対象 | 待ち時間 | 備考 |
---|---|---|
起動からタイトル画面まで | 約62秒 | 起動後、タイトル画面(メニュー)が表示されるまでの時間 最初のメーカーロゴはすべてスキップ不可。さらにロード完了後、 「このゲームは難しいので何度も挑戦しましょう」的なメッセージが出るので、これを進めた後にタイトル画面表示。 こういうメッセージは最初の一回だけで良いです。 |
ニューゲームによる開始 | 約8秒 | ゲームモード(シナリオ)と難易度を選んで進める(+ボタン)後に入るロード時間。 その後パーティー構成を決める画面が出てくるが、ここでパーティーを選んだあとの開始はロード時間無し |
タイトル画面で「つづきから」で再開 | 約20秒 | 続きから始まる前にパーティー一覧(ニューゲームで始めた時と同じ画面)が出るが、別にここから既存パーティーを変更できるわけではない |
起動直後のロードは少し長めの印象ですが、ゲーム中は特にロードはありません。ただ少し操作が重く感じる気がします。それ以上に本文で触れた問題でテンポが良いとは言い難いです。
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