Into the Breach

レビュー
出典:My Nintendo Store

さあ、頭の体操の時間だ (2022/6/24追記あり)

 ローグライクな宇宙船RTSの傑作として名高い「FTL」。そのゲームスタジオSubset Gamesが手掛けたストラテジー作品として注目を集めたのが、この「Into the Breach」です。その前評判の通り、本作も実に良くできたゲームとなっています。

(2022/6/24追記)
 嬉しい事に、2022/7/19に無料アップデートで「Advanced Edition」が追加されることが発表となりました。日本語記事はこちらで。
 新しいパイロット、新しいユニット、新しいスキルに新しい難易度と、様々なアップデートが行われるようです。今から待ち遠しいですね!アップデートが来たらレビュー更新したいと思います。

ゲーム概要

 本作の主人公はタイムトラベラーで、特殊な能力を持つ何人かの中から一人選びます(最初は一人で、少しずつ解放)。選んだ主人公は戦闘メカに乗って大地に降り立ち、人類を襲う巨大生物「VEK」から都市を守る、というストーリーです。

 なぜタイムトラベラーなのか?は良く分かりませんが、恐らくローグライク的な味付けでしょう。世界には無数の「世界線」が存在し、ゲームの舞台はその内のひとつなので、ステージや敵の構成が毎回異なるのは当然、と言うわけです。
 この世界を守っても、守れなくても、別の世界線を救うべくタイムトラベラーは戦い続けます。その設定のためか、ゲームクリアもしくはゲームオーバー時、生き残ったパイロットの内ひとりを次の世界線の主人公として選ぶことが出来ます。(レベル状態を引き継げる)

 ゲームの流れとしては、上記の主人公の他に、搭乗する戦闘メカのセットを選ぶことになります。ワンセットは3機体で構成され、それぞれに火力重視、炎特化などテーマが設定されています(最初に選べるセットはやはり一つだけ)
 その後マップ画面から戦場を選び、いざ戦いとなります。戦場にはそれぞれ勝利後の報酬や特殊ミッション(特定の条件達成で追加報酬)、推定難易度などが設定されているので、現状に合った戦場を選択しましょう。

 ゲームの本編となる戦闘部分ですが、これが実に独特で、画面は典型的なタクティカルRPGっぽいのですが、敵の行動パターンが最初からすべて分かっています。プレイヤーはそれを見て敵を倒すべきか、味方あるいは都市を守るべきかを考えて行動する事ができます。
 HPが敵のボス除き一桁で収まる状態で、主人公の戦闘メカは1~3しかありません。回復手段はあるのものの、基本的にノーダメージを狙いたいところです。

 攻撃手段も直接攻撃でのダメージはもちろんありますが、それよりも攻撃の結果として敵をノックバックさせて川や海に落としたり(飛行生物以外の多くは泳げない)あるいは同士討ちさせたりして敵に自由に行動させないことが大切です。
 何しろこちらは3機、数の上では圧倒的に不利なうえ、射程無限の遠距離攻撃や厄介な範囲攻撃を持っている敵もいます。もし早々に味方が一機やられるような事があれば、戦局は絶望的なものになります。

 このゲームの戦略性について例を挙げましょう。例えば遠距離攻撃を持つ敵が、都市を攻撃しようとしています。
それに対抗する手段として、

  • 攻撃される前に倒す
  • 敵の場所をずらして攻撃を外させる
  • 敵を攻撃不能状態にする(煙幕など、いくつか方法あり)
  • 射線の間に敵を引き込んで同士討ちさせる
  • 射線の間に戦闘メカを割り込ませてガードする
  • 都市にバリアを張ってガードする
  • 諦める

のように、たくさんの選択肢があります。最後の「諦める」も、より優先度の高い防衛対象や特殊ミッション達成条件が関わってくるなら、むしろ積極的に狙うべき場面もあります。
逆にその都市を破壊されたらゲームオーバーという事態になるなら、命を捨ててでも守らなければなりません。

 こうしてすべての敵を倒せばその戦場はクリア。次の戦場を選択する…を繰り返します。都市が破壊されると電力メーターが減っていきますが、これがゼロになると人類の敗北でゲームオーバー。主人公が死亡してもゲームオーバーです。(主人公以外はAIが代わりのパイロットとなりますし、途中で補充のチャンスも有ります)

 一定数の戦場をクリアするとボスが出現。その島の防衛戦となり、他の個体より強力なボスが出てきます。防衛戦なので、一定ターン守り切ればボスは撤退していってクリア。もちろんターン以内に倒せれば追加報酬が貰えます。
 貰った報酬で新しい武器やパイロットを手に入れたり、減ってしまった電力を回復したり、装備のアップデートをします。
 なお、戦場にタイムカプセルが落ちてくることがあり、それを回収する事でも新装備やパイロットを獲得できることもあります。

 こうして全部で四つの島を巡っていくわけですが、二つの島をクリアした時点からは最終面を選ぶことができます。敵はゲームの進行とともに強くなっていくので、十分な装備が整っていたら、早々に乗り込んでも良いでしょう。

良い所

しっかり練られたゲームバランスから生じる達成感

 この手のゲームでは、大抵主人公は優秀なスキルやステータスに恵まれていて、一騎当千の働きをするものが多いです。もちろん主人公たるタイムトラベラーにはそれぞれ固有の特殊スキルが存在するのですが、舞台はメカと巨大生物の戦い。パイロットの身体能力は無意味です。そのためちょっとの油断であっさり破壊され、かといって安全に立ち回ろうとすると都市がボロボロに。
 このあたりのゲームバランスは実に優れていて、しっかり予測を立て、部隊を守り、そして街も守る、と言ったプレイが狙ってできたりすると、思わず自分のプレイを自画自賛したくなるような達成感を味わえます。

(基本的には)運に左右されない、完全なる自分との闘い

 本作はこちらの攻撃も巨大生物の攻撃も、どちらも必中です。従って、一つの戦いの中では運頼みは発生せず、十分に練った戦略で打開する事になります。
(例外的に、都市がダメージを受けるかどうかは確率で決まります)
とは言えローグライクではあるので、攻略中にどんなパイロットが加入するか、どんな新武器が手に入るか、等は運次第です。
 しかしパイロットも武器も極端に強いものは多くなく、誰が、どんな武器が来ても臨機応変に戦術を組み立て、対応が求められます。ローグライクの中では運要素は少ない方でしょう。運が悪くて負けた、より、動かし方を間違って負けた、の方が圧倒的に多いです。

シンプルなのは良い事だ

 ゲーム画面を見て頂ける通り、このゲームの見た目は地味です。筆者としてはこういったドット絵のゲームは好きですけどね。
 ストーリーも実にシンプル。巨大生物を殲滅せよ、という実に分かりやすい目的。なぜ巨大生物が現れたのだろうか、とか主人公達はいかにしてタイムトラベラーとなったのか?等の余計な考察は一切ありません。必要であればプレイヤーが妄想すれば済むことです。
 そのような割り切りのためか、本作はゲームのテンポが非常に良く、ロードも皆無です。何度でもプレイする前提のゲームにおいて、このシンプルさは重要です。一番時間が掛かるのは、間違いなくプレイヤーの思考時間でしょう。

賛否両論っぽいところ

運に助けられると負けた気分に

 「良い所」で、都市がダメージを受けるかどうかは運次第、と書きました。
これは「インフラ防御率」という確率に依存し、報酬を使ってあげる事もできます。
 運要素が少ないゲームであるだけに、ゲームオーバーを覚悟したら都市が無事生き残ってクリア、という形で運に助けられると、何だか負けた気になります。
 インフラ防御率を上げる事も立派な戦術のひとつですし、時には運に頼っても良いのですが、インフラ防御率が常にゼロのストイックなゲームプレイもしてみたかったなと思ったりします。

どうやっても被害が出る時は出る

 敵によっては、非常に厄介な攻撃能力を持つ敵が存在します。範囲攻撃などはその最たるものです。戦場がランダム(もちろん、クリア不能にならないように計算の上で敵の配置が行われているのでしょうけれど)であることも相まって、どう頑張っても戦闘メカや都市の被害を避けられない時が出てきます。
 そういったダメージコントロールもゲームの要素の一環なのですが、同種のゲームでは被害なしの勝利が結構簡単に出来てしまうものが多いので、そのノリでいると、どう頑張っても被害が出てしまう状況に苛立ちを覚えてしまう方も居るかも知れません。

イマイチに思うところ

最終戦がワンパターン

 本作は四つの島と最終戦の舞台となる島の5つの島が存在するのですが、四つの島については緑豊かな島、氷に覆われた島など特色があり、それが戦場にも反映されています。
島の攻略の順番は自由ですし放置して最終戦に臨む事も出来ますので、ちょっとこの島は飽きたかな、と思ったら放置する選択肢もあります。
 ですが、最終戦の島は固定で、敵の配置こそ違えど、基本的な流れはいつも同じです。ここで人によっては飽きが出てしまうかなと思います。

まとめ

 他のローグライクでありがちな「このアイテム拾えたら勝ち確定」のような運要素は少な目で、あくまで自分の戦術が勝利を導くという実感を味わえる作品です。ワンプレイも四島全制覇してもそれほど時間が掛かるものではなく、コツを掴めば被害は出るものの結構な高確率でクリア出来る事もあり、「もうちょっとでクリアだったのに!」と再挑戦して寝るつもりが朝になっていた、みたいな無限ループに陥る事も少なく、安心してお勧めできるゲームです。

 ちょっとだけ欲を言えば、ワンゲームに一回でも良いので、都市攻撃を完全防御とか、指定した敵を即死とか、どうにもならなかった時の切り札的なものも欲しいなと素人的には思ってしまうのでしょうが、恐らく開発者側もそういった要素を色々検討したうえで今のシステムに落ち着いているのでしょう。派手さは要らない、頭で勝負という、どこまでもストイックなゲームだと思います。

主なロード時間(演出による待ち時間含む)

計測対象待ち時間備考
起動からの最速ゲーム開始 20秒起動~ゲーム開始後の戦隊/難易度選択画面が出るまでの時間
起動直後メーカーロゴも無く、いきなりロードが始まって終了すれば即タイトル画面と言う簡潔さ

上記のソフト起動以降は、待たされるという感覚がまずありません。本文で書いた通り、極めて快適に遊ぶことが出来ます。

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