こういうゲームを待っていた、と言いたいタクティクスRPG
タクティクスRPGは数あれど、ローグライク要素を持つものは意外と少なかったりします。ストーリーが本筋に合って、サイドクエスト的な位置付けでフリーバトルが存在する、というものが多いのではないでしょうか。
その中で本ゲームはローグライク寄りで、敵も味方も入手できるアイテムも毎回異なる他とは一線を画すタクティクスRPGとなっており、なおかつそのバランスも非常に優れた一作となっています。
ゲーム概要
まずストーリーは過去に大きな戦争が発生し、その戦争を終結するために禁呪が使われ、その結果戦争どころか文明自体が終了。その挙句にモンスター達が大発生して残された人類は滅亡を待つだけ、と言う状況からスタートします。
モンスター達は禁呪の影響で発生した紫の霧の中から現れるのですが、この霧を晴らすための大魔法が発見されたため、人類は最後の希望をかけてこの大魔法(The Last Spell)を成功させるために各拠点で防衛を行う、という流れです。
実際に街を防衛するメンバーたちは「英雄」という位置付けで、プレイヤー自身はその司令官となって英雄たちを操作するだけでなく、昼間は資金や資材で街の発展や防衛施設を強化するといったクラフト要素も存在します。
しかし本作品の特徴はなんと言っても「敵の数が圧倒的に多い」という点に尽きます。誇張なく四方八方から攻め寄せるモンスター達を、最大でも6人という僅かな英雄だけで迎え撃たなければなりません。
普通に考えれば絶望的な状況なのですが、英雄たちは他のタクティクスRPGと違い1ターンに移動と攻撃一回ずつではなく、移動力と行動力がある限り好きに行動する事ができます。
例えば、遠くから遠距離攻撃で攻撃し、その後敵に近付いて近接攻撃をした後元の場所に戻る、と言うようなことも1ターン内で可能という事です。
このような特性と前述した防衛施設をフル活用して、押し寄せる敵を全滅させる(各ステージの最終戦ではボスを撃破する)事が目的となります。
良い所
タクティクスRPGとしては珍しい爽快感あふれる戦闘
タクティクスRPGは大抵が自分の出撃数と敵の出撃数が同じ、あるいは敵がやや多い位のバランスで、基本的に敵一体を倒すのに時間を要します。
しかし本ゲームでは敵の数が圧倒的で、その分敵一体はかなり脆い敵が多いです。(もちろん、体力のある敵も後半になると出てきます)
そのようなバランスのため、基本的には斬って斬って斬りまくる展開となります。範囲の広い攻撃スキルを使えば、一気に数体仕留める事も可能です。
一方で各ステージ後半になると強力なエリートモンスター、最後にはボスが控えており、その体力はずば抜けて高いのですが、これはこれでバフ・デバフを駆使して対策を取れていれば1ターンキルすら可能な攻撃力をたたき出す事が出来、一騎当千の爽快感も、圧倒的な攻撃力で敵を粉砕する爽快感もどちらも味わうことができます。
奥の深いシステム
本ゲームでは、一般的なRPGにはあまり無い要素が見られ、それが攻略に大きくかかわってきます。
まず攻撃属性は「近接攻撃(剣や斧など)」「遠距離攻撃(弓や銃など)」「魔法攻撃(杖や魔導書など)」の三つに分かれています。攻撃力に関わるステータスも上記三属性について別々に設定され、近接攻撃のダメージは高いが魔法攻撃のダメージが低い英雄など、個性が出てきます。
(ここで注意なのが、翻訳の問題で「近接攻撃=物理攻撃」と訳されてしまっている点です。物理攻撃と言うと弓や銃も物理になってしまいますが、そうではないので注意してください。)
防御力に関するステータスもいわゆる防御力(本ゲームでは数字ではなく%で表され、敵の攻撃をどれくらい減らせるかを表す)の他、ダメージの肩代わりをしてくれるアーマー、数字分だけダメージを減らしてくれるブロックなど、様々な要素が存在します。
他にも精度や確実性など、耳慣れない言葉がたくさん出て来て、最初は戸惑うと思います。しかしいずれも非常に重要かつ本ゲームを奥深いものにしている要素なので、これらの関係をしっかり把握する必要があります。
これらさえ理解できれば敵の特性に合わせて効果的な武器種、武器スキルを選んで立ち回る事ができるようになり、ゲームの楽しさも一段階上がると思います。
レベルアップや解放要素の楽しみ
RPGであれば欠かせない成長要素も勿論あります。
英雄たちは経験を積む事でレベルアップしますが、その際にどのステータスをアップさせるかはいくつかの選択肢から選ぶことになります。(1レベルにつき2回)
その際の選択肢はノーマル/アンコモン/レアのグレードがあり、レア度が高いほど上昇幅が多きく、貴重なステータスのアップも可能です。
レアの中にはマルチヒットや行動力など喉から手が出るほど欲しい(どの位有用なのかはゲームをプレイしてみると実感できます)ステータスアップも有るので、レベルアップで何を引けるのか毎回楽しみです。
一方でローグライクお馴染みの永続強化については、敵を倒す事で入手できる「闇のエッセンス」を捧げる事でレアリティの頻度向上や「オーメン」(プレイ中に反映される特殊なパッシブ効果)を解放するほか、特定の武器を使ったり一定数のアイテムを購入する等、ゲーム中の行動に応じて解放される要素が存在します。
特定の武器を使う事で解放される要素については、自然とどの武器も満遍なく使い込むきっかけとなり、そのお陰で使わないでいた武器の強さに気付くことができます。私は見事に近接武器ばかりが使用回数が低かったのですが、解放の為に使っていて近接武器の良さが分かり、そのおかげで突破出来た局面もありました。
また、解放するとワンランク上の武器が解放されるので達成のし甲斐があります。
賛否両論っぽいところ
やたらと難しく感じるバランス
最初の頃は割と無双的な立ち回りができるのですが、後半、私の場合は4ステージ目のエルダーリヒトで「どう考えてもクリア不可能では?」と思うような難易度になってきました。一番易しい難易度設定での話です。
結論から言うと最終的にクリアは出来たのですが、運に助けられたこともありもう二度とやりたくない、と思ったレベルの難しさでした。後述しますが、1ステージをクリアするまでの時間が掛かり過ぎて、ゲームオーバーでやり直しになった時の喪失感が激しいです。
クリアできる以上、バランスとしてはむしろ秀逸であるのでしょうが、とりわけエルダーリヒトの仕掛けはちょっとやり過ぎでは?と思う部分もありました。人によっては投げ出してしまうかもしれません。
前述の通り解放要素があるのでゲームオーバーになってもすべてが無駄になるわけではないので、じっくり時間をかけて何度も挑んで遊べる気の長い人には問題無いと思います。
とにかく時間がかかる
いわゆるローグライクに分類されるゲームの中では、1ステージを通してクリアするのにかなり時間が掛かります。ステージの序盤はともかく、終盤では一つの夜をクリアするのに2時間くらいは余裕で掛かってしまいます。
これは別に戦闘の演出が長いからという理由ではなく(むしろシンプル)、考えられる選択肢の幅が非常に広く、悩む時間が多いためです。
無数の敵が出現するため、普通に戦っていると物量に押し負けます。対処しきれない分は街の防衛施設に頼るか、移動力を落として進軍のスピードを下げるか、はたまたスタンさせて行動不能にするか。行動回数に限りがあるので、与えられたリソースの範囲内で最適解を探さなければなりません。毎ターン詰将棋をやらされている気分になります。
じっくり時間を掛けて取り組める反面、寝る前にちょっとワンプレイ、と気楽には行かないのが悩ましい所です。
イマイチに思うところ
エラー落ちが多い
本ゲームの問題点はとにかくこの一点、「エラー落ち」です。とにかくよく落ちます。だいたい2~3回の夜戦闘をした後はいつ落ちてもおかしくないです。
幸い、ローグライクとは言え戦闘中にエラー落ちしてもその夜戦闘の直前から再開できるのですが、ステージ最後のボス戦など大事な戦いでエラー落ちするときついです。
ゲームを起動した直後の初回戦闘でエラー落ちした事は無いので、ボス戦前にセーブして一度ゲームを終了して再起動して臨めば大きな問題はありませんが、ここはやはりメーカーに対応してもらいたいところです。
まとめ
押し寄せる敵を片っ端からなぎ倒すだけでなく、後々の事を考えて厄介な敵を優先して倒したり、あるいは弱い敵をわざと残して防御施設へのダメージを抑えたりと、とにかく頭を使うこのゲーム。唯一の問題点としてエラー落ちが有りますが、それを差し引いてもタクティクスRPGで容赦ない数の暴力と戦ってみたい方には自信をもってお勧めできます。
Steam版では2024年にDLCが予定されているようで、Switchにも展開される可能性は高いです。まだまだ発展していくゲームですので、ぜひメーカーにはエラー落ちを修正してもらって、このゲームを完全無欠のものにしてもらいたい所です。
主なロード時間(演出による待ち時間含む)
計測対象 | 待ち時間 | 備考 |
---|---|---|
起動からタイトル画面まで | 約25秒 | 起動後のメーカーロゴはスキップ不可 |
タイトル画面から前回プレイをロード | 約53秒 | ロード後操作可能になるまでの時間 |
起動から前回プレイのロードまでセットで1分以上。かなり待たされる印象ですが、その後はロードが気になる事はありません。(終盤、敵が多くなってくると敵の行動時に数秒ほど止まったようになる事はあります)
ただ本ゲームは前述の通りエラー落ちが多いため、それを予防するために頻繁にゲームの再起動が必要となります。そうするとこれらのロード時間はかなり気になります。
本来はこのような再起動は不要であるべきなのですが、現状では不可避な問題なので考慮に入れておくべきかと思います。
コメント